政党政派を超えて求める子どもたちへの安全

6月、内閣委員会において、大沢辰美議員から、分離信号の増設を強く求める質問がおこなわれました。


内閣委員会会議録第十四号 
平成13年6月5日【参議院】
大沢辰美議員質問(日本共産党)


○大沢辰美君
 日本共産党の大沢辰芙でございます。最初に、交通安全の基本計画についてお尋ねしたいと思います。昨年の交通事故の基本計画についてお尋ねしたいと思います。
昨年の交通事故による負傷者は、ご存じのように十年連続の増加を来しています。戦後最悪を記録した前年よりも九・八%も増加しているんですね。百十五万人に達しているというこの数字ですけれども、これは政令市である広島市、ここは百一十二万人の人口ですけれども、を超える負傷者が出ているわけですね。だから、毎年政令市の人口に匹敵する人たちが交通事故によって負傷しているという実態が生まれているわけですね。だから、私は、負傷者だけ見ると八九年の交通事故非常事態旦言を上回っている件数だと思うんですが、事故件数でも過去最悪を更新している今日において、新たな交通安全基本計画を策定されたわけですけれども、このような事態をどのように認識されているのか、まずお尋ねしたいと思います。

○大臣政務官(阪上善秀君)
大沢先生と同じ兵庫県でございまして、答弁をさせていただきます。
平成十二年の交通事故の件数は九十三万一千九百三十四件、負傷者数は百十五万五千六百九十七人となり、ともに過去最悪を記録いたしております。
御指摘のように、多数の方が犠牲になっている交通事故の現状は極めて深刻な状況であると認識をしておるところでございます。

○大沢辰美君
認識をしていますということですけれども、それだけでは交通事故は解決しないわけですから。昨年の交通事故の被害者の状況を見てみますと、負傷者数は、八九年に政府が交通事故非常事態宣言を出した時点の負傷者八十一万四千八百三十二人の四割増にもなっているわけですけれども、この非常事態を上回る現状を本当に、今認識をしているとおっしやいましたけれども、私はその認識をして対応する必要があるということを指摘したいと思うんです。
中央交通安全対策会議が三月十六日に策定した交通安全基本計画を見せていただきました。これは、二〇〇五年度までに、事故発生時から二十四時間以内に亡くなる人を、交通安全対策基本法が施行されて以降最低だった八千四百六十六人、これは一九七九年の数字なんですけれども、それ以下にすることを目標に掲げています。
そのことはそれでいいんですけれども、しかし、負傷者、事故件数に関しては明確な目標がありません、出ていません。負傷者、事故件数自体を減らすための長期目標と、それを実現するための計画が必要と考えますが、政務官、大臣、どちらかお願いいたします。

○大臣政務官(阪上善秀君)
お答えをいたします。
第七次交通安全基本計画におきましては、死傷者数について初めて具体的な目標が設定されたところであります。交通事故による死傷者数を限りなくゼロに近づけ、国民を交通事故の脅威から守ることが究極の目標でありますが、当面、自動車保有台数当たりの死傷者数を可能な限り減少させることを目指していきたいと思っております。
次に、政府といたしましては、交通事故による死傷者数についての目標に加えて、死傷者数についての目標の達成を目指し、諸対策を実施いたしてまいりたいと考えておるところでございます。

○大沢辰美君
大臣にもう一度お尋ねしたいんですけれども、それでは政府の姿勢としては非常に
私はあいまいだと思うんですよ。やはり段階的にどう事故件数、負傷者を減らしていくかということも含めて、自動車台数に合わせてやはり事故件数がふえて、負傷者がふえて、死亡者もふえているという今の現状になっているわけですから。事故件数が増加して負傷者が増加する中で、後遺障害を一生負い続けなければならない人たちもふえております。これも特に一級から三級ですね、こういう人たち、重度の後遺傷害は、自賠責の支払い件数で見ましたら、この十年間で二倍になっているわけですね。ですから、あいまいな目標を掲げて済む事態ではないというところに今来ているということなんです。
ですから、前の運輸省の諮間機関の運輸技術審議会の答申、「安全と環境に配慮した今後の自動車交通施策のあり方について」でも、低減目標は、死者数のみならず、事故件数、負傷者数、保有台数、または走行距離当たりの事故件数などを指標とすることが考えられるが、国民にわかりやすいものであること、かつ、施策の進捗状況を常に容易に評価できるものであることが必要であるとしております。
ですから私は、負傷者についてもどれだけ減らしていくのか、段階的な目標の設定が必要ではないかと思いますが、その具体的な施策を思い切ってとるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(村井仁君)
交通事故の現状というのは本当に、今、大沢委員御指摘のように大変憂慮すべき状況でございますが、何と申しましてもいろんな要素が絡み合って起きている事象でございますので、関係各省、いろいろな形で協力をしながら、それの減少を図るために精いっぱいの努力をし、そしてまた、起きましたことに対しましてはいろいろな形での救済手段もとっていくということではないかと思っております。
私ども警察の立場からいたしますと、いずれにいたしましても、きちんと取り締まりをやりまして、例えば速度をきちんと守ってもらう、あるいは交通ルールを守ってもらうというようなことをしっかりやっていかなければいけない。あるいは設備施設等につきまして、私どもの知見で、私どもが知るところで、こういうところを直せば交通事故が減るのではないかというような経験則から出てくるものもございましょうから、そういうものはまた国土交通省等、関係各省にお願いをし、情報交換もいたしまして、政府全体として交通事故の減少を図るためにできるだけの努力をしてまいるということだろうと思っております。
そこで、ちょっと数値目標を出すとかいうようなところは、なかなかこれは実際問題として技術的には難しいところではないかと思っております。

○大沢辰美君 
いろんな要素が垂なって事故が発生するからこそやはり警察庁が中心になって、本当に国土交通省、それぞれの関係機関と協力し合って総合的に、死亡者をなくしていくことはもう一番大きく掲げていますけれども、負傷者の問題を、難しいとおっしやいましたけれども、安全計画を立てたわけですから、やはりそこに年次計画を立てて、段階的な負傷者を減らす対策を講じると同時に、やはり私は数値目標も可能なのではないかと思います。
そのことをやらない限り、私は死亡者も減らないということをもう一度要請をしておきたいと思います。その点については。

○政府参考人(坂東自朗君)
先ほど来内閣府の方からも御答弁しておりますように、政府におきましては第七次交通安全基本計画というものを立てまして、その中で、死者数につきましては具体的な数値目標を掲げ、それから死傷者数につきましても台数当たりの死傷者数というものの率をできるだけ減少させようという目標を掲げているところでございますから、我々警察といたしましても、平成十七年の政府間標値に向けて、毎年毎年着実にこれが達成できるような各種施策というものを打ってまいりたい、このように考えております。

○大沢辰美君
その点については着実にやっていただくということを要請いたしまして、次の質問をさせていただきたいと思います。
特に歩行者を巻き込む交通事故についてお尋ねしたいと思うんです。歩行者が犠牲になる事故について警察庁にお聞きしたいと思うんです。交通安全白書十二年版を見ますと、先進各国の交通事故について比較表がございますが、ここで日本と他の先進国との交通事故状況に明確な違いが出ていますね。
日本の場合は、交通事故の被害の中で、歩いていたり自転車に乗っていたりしていて亡くなる人の数が多うございます。歩行中、自転車で事故に遭い亡くなる人と、自動車で亡くなる人を比べた場合、歩行中、自転車の人はアメリカでは一八%に抑えられているんですね。ドイツで三四%、スウェーデンで三六%、イタリアで三〇%、オランダで五一%イギリスは五七%。しかし、日本は一〇〇%なんですね。同数なんです。先進国でこんな国は日本だけだと数字で出されています。
高齢者、子供、交通弱者が犠牲になっている事態に、私は本当にメスを入れる必要があると思うんです。車と歩行者、車同士が一番接触する場所はやはり交差点だと思います。だから、事故の発生割合が高く、対策は以前から求められてきてやられているけれども、事故発生件数に占める割合が過去十年間どうなっているか、その数字をまず示していただきたいと思いますが、教えてくださいますか。

○政府参考人(坂東自朗君)
お答えいたします。
全交通事故件数に占める交差点と交差点付近の交通事故件数の割合でございますけれども、過去十年間では、交差点関係五〇%前後、そして交差点付近が九%前後で推移しているところでございます。

○大沢辰美君
やはり数字が示していますけれども、十年前はどうですか、十年前と現在との数字
の比較は。パーセンテージで結構です。

○政府参考人(坂東自朗君)
今詳細な資料を持ち合わせておりませんけれども、それ以前におきましても大体同じ傾向であったのではないかと考えております。

○大沢辰美君 
これも数字が調査表で出ているわけですけれども、数字が示されているのは、十年前で全体の事故の発生率、交差点、交差点付近で割合は大体四十数%なんですね。現在、これは九九年度の数字が四五%という、だから交差点の事故の割合は減っていない、むしろふえてきているというのが実態だと思いますね。
ですから、信号を守って青で横断歩道を渡っているにもかかわらず、右折左折の車に巻き込まれて歩行者や自転車が犠牲になるという事態が今も続いているということなんです。だから、異常な事態だと思うんですね。だから、このような交差点での歩行者が犠牲になる事故は、やはり今も言われたように交差点、信号運用の私は構造的な問題があると思うんです。
ですから、自動車と歩行者を分離することでこの事故は防ぐことができるのではないかと。だから、信号の運用で歩行者が渡っているときは車をとめる、分離信号の対策を強めることがその対策の大きな一つではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

○政府参考人(坂東自朗君)
委員御指摘の歩行者と車両の通行を時間的に分離するという歩車分離運用の信号というものは、交通の円滑という観点に配意をしつつ適切に運用すれば、横断歩行者の安全確保のための有力な手段の一つと考えているところでございます。
こうした考え方のもとに、委員御指摘のような分離式信号機の導入とか、あるいはスクランブル交差点の導入ということにつきましては、各都道府県公安委員会におきまして、交通状況とかあるいは地域住民、関係行政機関等の御意見とか要望とか、そういったものを総合的に勘案した上で、その適否について判断して設置するかどうかということを決めているものというように承知しているところでございます。

○大沢辰美君 
今、そういう分離信号というのは交通事故をなくする手段の一つとして有効であるということをおっしゃったわけですけれども、この点について、都道府県で判断をしてやられているということですが、全国的な実態をおつかみになっていらっしやいますか。その点、教えていただけませんか。

○政府参考人(坂東自朗君
先ほどスクランブル交差点と申しましたけれども、これも要は歩車分離というんでしょうか、そういうものにカウントすることができると思いますので、まずそのスクランブル運用の数でございますけれども、全国では約千カ所余りを把握しています。それから、それ以外の歩車分離運用の信号機でございますけれども、全国で約五百弱というものを把握しております。

○大沢辰美君 
その結果、これはここ数年間、非常に対策として強化されてきた内容だと思うんですが、交通事故の防止にどのような効果がでているか、わかりましたら。

○政府参考人(坂東自朗君)
そういった歩車分離信号を設置することによってどのような効果が生じているかというお尋ねでございますが、残念ながら詳細データは持ち合わせておりませんけれども、車とそれから歩行者というものが時間的に分離されるということでございますので、やはり歩行者の安全対策には大きく寄与しているものというふうに考えております。

○大沢辰美君 
信号を守って歩いている子供や高齢者に車が突っ込んでくる。左右を見てよく確認して渡りましょうと、こう教えられている子供たちが犠牲になっているわけですから、歩行速度が遅い子供や高齢者がこんな無防備で危険な状態にあるということは、私はやはり本当に解決しなければならない問題だと思うんです。
ですから、運転手の皆さんは、歩行者を見落とす運転者がいなければいいということになるわけですけれども、やはり人間はミスを犯す場合もあるわけですから、人と車の交差構造を本当に根本的に見直さなければならないと思うんですね。
 ですから、何回も申しますが、交通弱者の命を守れない、私は人命を最優先する立場から、右折左折の車両往来の激しい箇所、特に子供たちが通学道路として使っている場所とか、そういうところは各県に、ちやんとつかんでいると思いますが、今、個数が全国で約千五百カ所と言われておりますが、信号が現在全国で十七万余りですか、
ですから本当にまだわずかしか設置されていないわけですけれども、やはりこういうのが効果があるという点を認識されて、これから本当にこの問題を、地域によって、場所によって違うけれども、ふやしていくことが交通事故を防止する大きな対策の一つであると考えますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(坂東自朗君)
 先ほど来委員から御指摘のように、やはり交差点あるいは交差点周辺での事故発生率というものは依然として高いということでございますから、その交差点での信号機の運用も含めまして、あるいは交差点の通行違反なんかの取り締まりの強化も含めまして、交差点関連での交通事故の減少というものにつきましては警察としても最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。

○大沢辰美君 
最大限の努力ということですが、私は分離信号の問題を本当に解決の基本姿勢にしていただきたいというお願いをしたいと思うんです。

これも一つの例でございますけれども、御存じのように、子供を左折巻き込み事故で亡くし歩行者事故防止の運動を続けている長谷さんという方は、東京都の八王子の方ですけれども、小学校五年生の長男を左折のトラックに巻き込まれて亡くされた事故がございますが、「「交通事故」のウソ」という本の中で、行政はドライバーの不注意によって毎年一定の率で子供や老人の命が消えていくことを承知しながら、まず車を流すことを優先にして人と車の交差を強いてきたというように表現しています。ですから長谷さんは、歩行者が犠牲になるこの種の事故は構造死と言っても過言ではないということを指摘しています。
 私は、交通行政が容認するこの構造死をこのまま見逃すわけにはいかないと思うんですが、本当に、今努力をするということを言っておられますけれども、事故をふやさない、そしてなくしていくという皆さんの計画があるわけだけれども、こういう対策を本当に各地で、私は分離信号というのが非常に有効だということを、千葉県のモデルケースでもあらわれておりますから、その点の推進ですか、基本姿勢を本当に貫いていただいて、全国の信号の点検の中で、分離信号をどれだけふやせば事故をなくしていけるかという、そういう実態調査と対策を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(坂東自朗君)
 繰り返しになるかもわかりませんけれども、やはり歩車分離連用というものは、交通の安全という観点に配慮しながら適切に運用すれば歩行者の事故防止のためにも有力な手法の一つであるというように考えておるところでございますので、後は具体的な、各交差点ごとに交通状況とかいろんなものを総合的に勘案しながら歩車分離をつける方がいいというように判断されるならば、それぞれの公安委員会におきまして歩車分離信号というものを設置していくのではないかと、そのように考えているところでございます。

○大沢辰美君 
もう一度念を押したいんですけれども、ではないか、公安委員会がやるのではないかと。そうじやなくて、各都道府県に、その調査、実態を把握して、ここは分離信号をつけたらいいなというところがやはり出てくると思うんです。そういう対策を推進していただきたい。
だから、今全部やりなさいと言っているわけじゃないんです。実態調査をして、その上に立って対策を講じることが、この交差点付近の事故を私は軽減する大きな解決の方法の一つだと。

その点について、本当に実態調査をして、その上で対策を考えていただく考えをまず示していただきたいと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(坂東自朗君)
委員御指摘のような千葉県警の場合におきましても、やはりそこの交差点においてどういった信号制御をすれば車の円滑というものを確保しながらかつ歩行者の安全というもの、横断歩行者の安全を確保できるかということを、総合的な要素を勘案しながら、その交差点においては歩車分離信号を設置した方がいいだろうというように判断して千葉県公安委貝会においては設置したものというように考えておりますので、今後とも私どもは、都道府県警察の信号連用管理という場面におきましても、千葉県警においてはこういった観点からこのような要素を勘案しながらこのように判断して分離信号を設置した、といったような事例といったものを各都道府県警察の方に紹介してまいりたいというふうに考えております。

○大沢辰美君 
千葉県もそうですし、モデルケースをつくって頑張っていらっしゃるし、埼玉県の方も、本当にこの分離信号の効果を評価している報道がございました。ですから、私はすべての県を把握しておりませんから二つの例しか挙げられませんけれども、やはり警察庁として、もう実際にやられているところの効果もわかっていらっしやるわけですから、全国的に、皆さんの権限でできるわけですから、何度も繰り返しますけれども、実態調査をそれぞれにやって指示を出して、そしてその中で必要なところ、振り分けてやることを推進するというその積極的な姿勢をお聞きしたいんですよ。

○政府参考人(坂東自朗君)
私ども交通警察の最大のやはり目標というものは交通安全でございますし、そして、かつまた、先ほど来御答弁申し上げていますように、交通事故の中ではやはり交差点での事故というものが非常に高い率を占めているということでございますから、各都道府県公安委員会、各都道府県警察におきましては、その交差点での事故、なかんずく歩行者事故というものをいかに減少すべきかということは日々真剣に検討しているところであるというように確信しているところでございますので、そういった意味から、もろもろの交通諸条件、あるいは周辺住民の御意見等を聞きながら、歩車分離信号がいいというように判断されるならばそういった形で交通制御というものを行っていっているものというように考えておりますので、委員御指摘のようにいろんなところでそういった歩車分離信号をやっていますから、そういった意味での、どういった判断で歩車分離をつけたのか、あるいはその結果どういうような効果があったのかということは私ども警察庁としては十分に承知できる立場にありますから、そういった効果とかあるいは判断要素とかいったものを各都道府県には積極的に流すというか、そういうような状況といたっものを紹介するという対策は今後ともより積極的に進めてまいりたいというふうに考えております。

○大沢辰美君
 強く、都道府県任せではなくて、本当に責任ある交通事故防止対策、特に交差点の中での信号問題についても含めまして、分離信号というのがすばらしい効果を上けているとうことが私たちも調査の中でわかりました。皆さんの、取り締まりじゃなくて指導ですね、
各都道府県に対する強化をお願いいたしまして、次の質問に入らせていただきます。

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