M58 聖教新聞 11.9.8 書評
M59 公明新聞 11.9.8 書評

話題 子どもの命を守る分離信号 長谷智喜著

 青信号て横断歩道を渡っていた時、左折(または右折)してきた車に身の危険を感じた、という経験は誰にもあるだろう。もし、運転手が脇見してたり、何かに注意を奪われていたら・・・そう考えると慄然とする。

 本書は、7年前、青信号横断中の小学5年の息子を左折してきたダンプにはねられた父親(八王子市在住)が、我が子の死をきっかけに、現在の交通行政に疑問を感じ、同様の事故を調査。歩行者と車両を同時に交差点に進入させない「分離信号」設置の必要性を訴えたものである。

 青信号は決して安全なものとはいえない。人間の注意力は不確実なものである。歩行者がいかに交通ルールを守っていても、向かってくる鉄のかたまりから身をふせぐすべはない。現在の信号システムの恐ろしさに気づいた著者は、文献をあさり、また各交差点の通行量や歩行者の数、大型車の殺傷力や死角を調査。類似事故の比率を確かめた。やがて分離信号の必要性を訴えた写真展を開催。多くの賛同・共感の声を得て、分離信号設置の要望書を警察に提出。だが回答は「分離信号は交通ルールになじまない」。スクランブル交差点をはじめ、分離信号はあちこちに存在しているのに。

 ついに著者は東京都を提訴。地裁・高裁とも「必要性なし」と棄却した。あたかも人命より交通の効率を重視するような結果に、著者は、交通事故死は「構造死」と批判。今も運動を続け、仲間や理解者の輪を広げる。その仲間の働きから、今年、船橋市議会での分離信号設置促進可決という成果も生まれた。草の根の運動で安全な社会をつくろうという息吹に満ちた書だ。(信)●生活苦思馳想社1800円


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