毎日新聞 2000年10月30日 大阪

教育塔の合葬者の4割が通学路の交通事故 
安全確保取り組みへ−−大阪府教職員組合


【写図】 有
 全国の学業半ばで亡くなった子供や教育活動中に死亡した教職員らが慰霊されている教育塔(大阪市中央区)に、過去10年間で合葬された園児、児童、生徒(阪神大震災の犠牲者、戦没者を除く)計207人の死因の4割近くが登下校中の交通事故だったことが30日、大阪府教職員組合(大阪教組)の調査で分かった。通学路の危険性が浮き彫りになった形で、大阪教組は今後、児童、生徒への安全教育に加え、構造的な通学路の安全確保に取り組む方針を決めた。
 教育塔は1934年の第一次室戸台風で多数の子供や教職員が死亡したのを機に、大阪の教育関係者が「二度とこのような災害が起こらないように」と全国に呼びかけ、建立された。遺族が合葬を希望した約2万7000人の名前が書かれた札が納められている。48年以降は日教組が管理し、毎年10月30日に犠牲者を追悼する教育祭を続けている。
 91年から今年までの10年間に合葬された子供は計325人だった。ここから阪神大震災(105人)と新たに加わった戦没者(13人)を除いた207人を死因別に分類したところ、登下校中の交通事故79人▽授業や部活動中の不慮の事故76人▽病気39人▽天災(阪神大震災を除く)10人▽その他3人――の順で、交通事故がトップだった。
 今年は14人の児童、生徒が合葬されたが、千葉、石川、岐阜、福岡県の計5人が交通事故死。このうち2人の小学生は通学路が渋滞していたため、車の間を抜けて横断しようとしてはねられており、学校周辺の交通環境の悪さを浮き彫りにしている。妻と小学生の子供を一度に事故で失ったショックから自殺した男性も家族3人で合葬された。
 交通事故総合分析センターによると、99年の徒歩による登下校中の中学生以下の交通事故死傷者数(死亡は24時間以内)は6350人で、前年より373人増加。このうち死者は28人で、前年より1人増えた。
 この日午前9時半、大阪市中央区の大阪城公園にある教育塔前で、教育祭が行われ、教育関係者や遺族ら約1200人が集まった。
大阪教組の田渕直委員長は「今後、通学路の安全の確立に取り組まなければならない」と、子供の登下校中の事故削減に意欲を示した。 【磯崎由美】                      
■写真説明 教育塔の下に遺影を飾る遺族ら=大阪市中央区の大阪城公園で30日午前9時20分、梅村直承写す    

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毎日新聞 2000年10月31日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
登下校時の交通事故 死角あちこち

【写図】 有
 子どもたちを交通禍から守ろう――。大阪城公園で30日あった教育祭。学業半ばに死亡した児童や教育活動中に死亡した教職員ら2万7000人の名札が納められた教育塔に、この日新たに14人の児童、生徒が合葬された。過去10年間に合葬された園児、児童、生徒207人の死因の4割近くが登下校中の交通事故だったことが府教職員組合(大阪教組)の調べで分かったが、今年も登下校時の交通事故が目立つ。事故から何年たっても追悼式に参列する遺族も多い。「同じ悲劇を繰り返さないで」。子どもを失った親から事故削減への取り組みを求める声があがった。 【磯崎由美、粟飯原浩】                            
 参列者の一人の中学校教頭、望月真さん(48)=山梨県鰍沢町。10年前、帰宅するスクールバスを待っていた長男の勇太君(当時10歳)が、乗用車にはねられ死亡した。警察は勇太君の「飛び出し」としたが、望月さんには信じられなかった。
 しかし、ある時、望月さん自ら車で交差点を通過しようとして、突然視界に入ってきた子どもに驚き、あわてて避ける体験をした。
交差点の角の電柱が死角になり、姿が見えなかったのだ。「こういうことか」――。子どもは体が小さく、思いがけない動きをする。
さらに、道路の死角はあちこちにある。
 「せめて通学路は安全に」と、信号機の設置を警察や町に何度も要望した。だが、通学時間帯に車の通行を規制するスクールゾーンの指定には、住民の同意などが必要で、実現は難しそうだ。
 昨年、勤務する中学校で開いた安全教室で望月さんは講師役を買って出た。ようやく事故の話ができるようになり、生徒たちに、当時の様子や遺された家族の思いを話した。「自分を守るのは自分自身だ」。生徒たちにそう語りながら、「一瞬の不注意が命を奪うことのないような環境の整備が必要だ」と、大人たちの責任を痛感している。
   ×   ×                      
 式典終了後、教育塔を管理する日本教職員組合の榊原長一委員長は「一つ一つの通学路を子どもと一緒に歩き、問題点をチェックする運動を全国的にやりたい」と語り、警察や交通安全協会などと協力した通学路の再点検に取り組む姿勢を示した。

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毎日新聞 2000年11月2日 大阪

 目の前で息子が交通事故死 
「心に後遺症」と母提訴−−大阪地裁

 南海バス運転手の前方不注意が原因の交通事故で、幼稚園児だった一人息子(当時6歳)を目の前で亡くした大阪府堺市の無職、松本良美さん(36)が、事故の悪夢が脳裏から離れず、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとして、運転手と運行会社の南海電鉄(本社・大阪市)を相手取り、約5500万円の損害賠償を求める訴えを2日、大阪地裁に起こした。 (10面に関連記事) 訴状によると、事故は1998年1月13日午後1時過ぎ、堺市の南海電鉄堺東駅前で起きた。長男の祐人君と2人でそれぞれの自転車に乗り帰宅途中、松本さんが先に交差点にさしかかり「祐ちゃん、青やよ。渡るよ」と声をかけ、交差点を南から北に横断し始めた。3分の2ほど進んだ時、後方から右折したバスが迫ってきた。
松本さんはよろけながらバスを避け、振り返った時、バスの左後輪に巻き込まれる祐人君の姿を見た。祐人君は搬送先の病院で間もなく死亡した。
 運転手は、前方不注意による業務上過失致死容疑で逮捕され、禁固1年6月、執行猶予5年の判決を言い渡された。
 事故後、松本さんは無意識に、自分でも不可解な行動をとるようになった。祐人君の死を信じられず、幼稚園の送迎バスの停車場所で祐人君を捜し回ったり、いつの間にか自分の首を絞めたこともあった。また、信号機や横断歩道などを見ると、パニックに陥るようになり、病院でPTSDと診断された。現在も1人での外出が困難など、妹夫婦の助けがなければ生活ができない状態だという。
 このため、PTSDで働けなくなったことによる逸失利益として約3000万円、慰謝料1000万円などの支払いを求めた。 【森野茂生】                         
◆南海電鉄の山中諄・バス営業本部長の話           
 この事故については、大変お気の毒なことでした。当社としても、誠意を尽くして対応しました。現段階では訴状を見ていないので、それ以上はコメントできません。

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毎日新聞 2000年11月2日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
子どもの事故死でPTSD
もっと分離信号機を 「車より歩行者優先に」


 青信号だったのになぜ――。大阪地裁に2日、損害賠償訴訟を起こした松本良美さん(36)の長男祐人君(当時6歳)が亡くなった交通事故は、青信号の横断歩道上で起きた。信号を守っていた子どもや高齢者が、横断歩道で事故に遭うケースは後を絶たない。相次ぐ同様の事故は、車のスムーズな流れが優先され、歩行者の安全が十分に確保されていないクルマ社会の現状を浮き彫りにしている。
 昨年夏、「子どもの命を守る分離信号―信号はなぜあるの?」(生活思想社)という本が出版された。松本さんもこの本に手記を寄せ「何のための信号か、何のための横断歩道なのか」と訴えた。
 著者は東京都八王子市の病院職員、長谷智喜さん(47)。長谷さんも1992年、登校途中に青信号の横断歩道を渡っていた小学校5年の息子を、左折したダンプカーにひかれて亡くした。事故の真相を知りたいと調査を始め、子どもの事故があると現場に行き、遺族や目撃者の話を聞いた。
 そして浮かんだのは、横断歩道が青信号でも、歩行者の安全は車の運転手がどれだけ注意して右左折するかにかかっている、という多くの交差点の構造的な問題だった。
 長谷さんは、歩行者の横断中は車側の信号がすべて赤になる「分離信号機」の設置運動を始めた。95年、都などを相手に信号機の管理責任を問い提訴。敗訴し、控訴したが、東京高裁で「非分離信号機を原則とする交通政策が特に不合理とは思えない」として退けられた。
 赤信号が長くなり、交通渋滞が起こるなどの理由から、分離信号機の設置個所はまだ少ない。長谷さんは「交通政策は、歩行者の安全を確保したうえで、いかに車を通すかということを基準にすべきだ。今の道路は歩行者に優しくない」と話す。
 【森野茂生】   

【写真】 提訴後「青信号やバスが怖い」と話す松本良美さん(中央)=司法記者クラブで2日午前10時45分、三村政司写す
【図】松本さん母子が事故にあった現場

                    
◇「すべて奪われた心の傷を認めて」 提訴の母親会見     
 松本さんは大阪地裁に提訴後、弁護士らとともに会見。「すべてを奪われ、今も苦しんでいる心の傷を認めてほしい」と、絞り出すような声で訴えた。
 3カ月後に小学校入学を控えた一人息子の祐人君は、松本さんの腕の中で苦しみながら弱っていった。事故が原因で夫と離婚。強い恐怖感と無力感から、次第に人を避けるようになった。睡眠薬を服用して寝付いても、悪夢にうなされ、自分で体をかきむしり、もがいて目が覚めるという。「横断歩道や信号機が怖くて、見るだけで事故の瞬間に戻る。バスを見ると、殺されるという恐怖に襲われる」。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状は重く、今も週に1度の通院が欠かせない。
 「これからたくさんのことを乗り越えないといけないから、今回の提訴に踏み切りました」と話す松本さん。「私みたいに苦しんでいる遺族はたくさんいる。その人たちのためにもなれば」と、実名を公表して会見に臨んだ心境を話した。
 ◇危ない道路と子どもの交通事故についてのご意見や情報などを手紙(〒530−8251、住所不要)、ファクス(06・6346・1736)、メール(o.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp)で、「クルマ社会取材班」までお寄せ下さい。
■写真説明 提訴後「青信号やバスが怖い」と話す松本良美さん(中央)=大阪司法記者クラブで2日午前10時45分、三村政司写す   

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毎日新聞 2000年11月4日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
TAV交通死被害者の会代表に聞く 

【写図】 有
◇「TAV交通死被害者の会」田畑耕一代表に聞く       
 通学路や生活道路で、子どもたちが車の危険にさらされている。
事故の背景に何があるのか。子どもたちを守る方法はないのか。「TAV交通死被害者の会」代表で中学校教諭の田畑耕一さん(48)=写真・四条畷市=に語ってもらった。 【磯崎由美】    
 3年半前の雪の朝、集団登校の列にノーチェーンの車が突っ込み、当時8歳だった三男を奪われました。長年、人権教育に携わってきましたが、今の社会で本当の意味での人権がいかに守られていないかを痛感しました。年間何百人もの子どもの命を奪っている交通事故は、子どもにとって人権侵害の最たるものです。
 狭い道を歩行者どうしがすれ違う時、お互いに譲り合うのが普通です。ところが、多くの人はひとたびハンドルを握ると、車の方が道路を占拠する権利があると思いこみ、「道は譲り合うもの」という感覚が吹っ飛んでしまう。
 日本は都市計画がむちゃくちゃで、歩行者優先と車優先の道路が区別できていません。道はほとんど、車が円滑に流れることを第一につくられています。そして、遊び場や通学路など、子どもたちが日常の生活に利用する道路にも、多くの車が入ってくるようになりました。通学時間帯の進入が禁止されているスクールゾーンに入る車を止めようと、お母さんたちが街頭に立っていると、ドライバーから「急いでんや。通さんかい」と怒鳴られることもしばしばです。
 大人は子どもたちに「車に気をつけなさい」と言いますが、本当は「こんな道をなぜ車が通るのか」と訴えるべきなのです。子どもは飛び出すもの、お年寄りはよろけるもの。車はなるべく、狭い生活道路を通らないようにすべきです。
 私も以前は雨が降った日ほど車は便利だと思っていました。しかし、息子を亡くしてから、そうした日の方が危険性が高いことに気づきました。近所の勤務先まで、登校時間帯の通学路を突っ切ってマイカー通勤する人もいますが、そうした意識の背景には、スピードや快適さばかりを追求してきた日本社会の問題があるように思えてなりません。
 心にゆとりを持って生活すれば、ハンドルを握る感覚も変わるはずです。行政や警察も、車の円滑な通行ではなく、歩行者が安全に歩けることを優先する。そういう社会にして、私たちのような悲しみを抱える人を、できる限り減らしていかなければなりません。
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毎日新聞 2000年11月26日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
「危ない通学路」先生がチェック
大阪教組 「指導だけでは限界」

 子どもの登下校中の交通事故が後を絶たない中、大阪府教職員組合(田渕直委員長、約1万6000人)が来年1月から、府内の公立小学校などで通学路の危険個所をチェックし、改善を求める運動に取り組む。これまでの事故対策は児童、生徒に「交通ルールを守ろう」と教えることが主眼だったが、「子どもの注意力にゆだねず、大人の手で安全な道路環境をつくるべきだ」と、発想を転換した。既に今月から豊中市、東大阪市でモデル調査がスタート。日本教職員組合の榊原長一委員長も「通学路の問題点をチェックする運動を全国的にやりたい」と注目している。
 交通事故では全国で毎年400人以上の子どもが死亡、2000人以上が後遺障害を負っている。各校は児童らに交通法規を守るよう指導しているが、青信号で横断中に右左折車に巻き込まれたり、歩車道の区別がないためにはねられるなど、子どもが注意していても防げない事故が起きている。更に、通学路が幹線道路の抜け道に利用され渋滞したり、違法駐車が死角を作っているなど、学校周辺の道路環境は悪い。
 このため大阪教組は、過去の事故ケースを把握するとともに、各校の教職員が校区を回り、危険度の高い横断歩道や交差点などがどこにあるかをチェック、行政などに問題点の改善を要望していくことにした。来年1月に検討委員会を発足し、府内全域での調査を始め、新入生を迎える4月までに、通学路の安全を高めることを目標にしている。
 同教組の取り組みについて、青信号で横断歩道を横断中の息子を左折車にはねられ亡くした東京都八王子市の長谷智喜さん(47)は「子どもに『危険を予測して自分の身を守れ』と教えても、限界がある。成長するまで安全な環境を確保してあげるのが、大人社会の役目だ。警察や行政も一緒になり、全国から『うちも大阪のような安全な街にしよう』と注目されるような、波及力のある取り組みになってほしい」と話している。 【磯崎由美】        
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毎日新聞 2000年12月2日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
読者からの反響 「信号は低い位置に」


 「やさしい街に〜子どもとクルマ社会」のキャンペーン記事に対し、スタートからひと月で手紙やメール、ファクスなど約30件の反響を頂いた。危ない道路の構造やドライバーのマナーの悪さの指摘、ヒヤリとさせられた経験などがつづられ、子どもをクルマから守るための課題や提言も数多くあった。一部をご紹介し、さらにご意見や情報を募ります。 【クルマ社会取材班】        
◆右左折車から、歩行者を守って◆              
 「車より歩行者優先の社会づくりに、みんなで頑張る必要がある」。城東区成育4、通訳、大谷美々さん(47)は、横断歩道を青信号で渡っていて右左折車にはねられた子どもたちの記事を読み、歩行者の横断中はすべての車が停止する「分離信号機」の設置に賛同している。
 小学生の息子が後ろにいる時は、右左折車の運転手が息子に気付くよう、(横断歩道を)わざと後ろを見ながらゆっくり渡る▽携帯電話を耳に当て、片手ハンドルで曲がる運転手もいるので、息子には運転手の顔や様子を見るよう言っている――そんな自衛の策を披露しつつ、信号を守った歩行者が命を落とさない社会づくりを求めている。
◆運転手もヒヤリ◆                     
 「毎日仕事で車を運転している。左折中に青信号で横断歩道を渡ってくる自転車にヒヤッとしたことが、2度ほどあった」。Eメールで感想を寄せた損保代理店業、大西和巳さんは、ドライバーにとっても歩行者と右左折車が同時に青信号になる信号が危険だと指摘した。
 「左折で交差点の中央に来た時、自転車はまだ歩道を走っていて、視界に入らない。でもアッという間に横断歩道の中央にやってくる。何百人も犠牲にならないと政治や行政が動かないようでは、日本は貧困と言わざるを得ません」               
◆自転車道の充実を◆                    
 「自転車は地球環境に優しい21世紀の乗り物。でも日本の道路は、車のために存在していると実感します」。茨木市の会社員、山形大悟さん(29)は、自転車利用者の視点から、道路の問題点を訴えてきた。
 「(自転車が)狭い歩道を歩行者と共有するのはおかしいし、車道を走れば違法駐車や幅寄せで危険。広い歩道には自転車専用レーンがあるが、それも違法駐輪や店の陳列で走りにくい。車のためだけの道路づくりは時代の流れに逆行している」と、自転車専用道の拡充を求めた。
◆マナー向上も大事◆                    
 寝屋川市仁和寺本町4、自営業、西村愼さん(59)は「天王寺や京橋など大阪市内の繁華街には、歩道上に店の看板などがたくさん置いてあり、歩行者用信号が見えにくい」「歩道に乗り上げて客待ちしているタクシーもいるのに、取り締まりが甘い」と、大阪のマナーの悪さを指摘。また、横断歩道の歩行者用信号機について、「高い所だと、2・5メートルくらいの高さにある。お年寄りや子ども、背の低い人でも分かりやすいよう、もっと低い位置に設置すべきだ」と提言している。
 ◇記事についてのご意見や、危ない道路と子どもの交通事故についての情報などを手紙(〒530―8251、住所不要)、ファクス(06・6346・1736)、メール(o.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp)でお寄せ下さい。

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毎日新聞 2000年12月4日 大阪

 [やさしい街に]子供とクルマ社会 
大人が協力し安全な通学路を 

【写図】 有
 東大阪市教職員組合の教研集会がこのほど、同市長堂の長堂小学校で開かれ、「子どもとクルマ社会キャンペーン」で取材を続けている毎日新聞大阪本社社会部の磯崎由美記者が「大人の責任で安全な通学路を」と題して教職員らを前に講演した。
 同教組が所属する大阪府教職員組合は、東大阪市と豊中市で、通学路の危険個所などをチェックするモデル調査をスタート、子どもたちが安全に登下校できる街づくり運動に取り組んでいる。
 集会では、増え続ける交通事故被害の重度後遺障害者や子どもの過失に厳しい交通捜査、逸失利益の算定に男女格差がある損害賠償制度など、車優先社会の現状を報告。子どもたちが犠牲にならないためには、車より歩行者の安全を優先したコミュニティー道路や歩行者が横断中にはすべての車を止める分離信号機が必要なことを話した。
 参加した教師らからは、「勤務する学校周辺の道路が車の抜け道になっていて危険」「安全な交通環境にしていくことの大切さが分かった」などと感想を話し、交通安全教育の今後のあり方などについて質問した。磯崎記者は「地域と密接にかかわっている先生たちの役割は大きい」と大人たちが協力して安全な通学路を作ることの大切さを訴えた。 【粟飯原浩】    

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毎日新聞 2000年12月13日 大阪

 [やさしい街に]子供とクルマ社会 
飲酒運転の同乗者に賠償命令 飲ませる社会に警鐘
傷心いえぬ両親 執念の提訴結実

【写図】 有
 「多少飲んでも……」。そんな過信が一瞬にして奪ったものは、16歳の限りない未来だった。大阪地裁で言い渡された交通死亡事故の民事訴訟の判決は、人に飲酒運転をさせないことが「常識ある社会人」であると、飲酒死亡事故の背後責任を厳しく指摘した。事故から約4年半。亡くなった大阪府貝塚市、甲田浩貴さん(当時16歳)が残したポケットベルには、今も友人たちからのメッセージが入る。「カリメンウカッタ」「ハナミヤッタヨ」。両親はそのたびにメッセージを大学ノートに書き込み、3冊目になった。 【磯崎由美】                          
 1996年7月。定期試験が終わり、修学旅行を2日後に控えた夜だった。「おかん、行ってくるで」。浩貴さんは友達から花火に誘われ、ミニバイクで近くの広場へ向かった。帰宅を待つ母麗子さん(53)は聞こえてきたサイレンに胸騒ぎを感じ、間もなく鳴った警察からの電話に耳を疑った。病院に駆けつけると、浩貴さんは意識不明。「お母さんの命をあげる。足りなければお父さんの命ももらいなさい」。麗子さんは2日間、心の中で叫び続けた。
 葬儀は17歳の誕生日。友人が自宅に集まり、涙声で「ハッピーバースデー」を歌った。幼稚園の卒園式で「将来は貝塚の市長になる」と宣言した浩貴さん。中学ではサッカー部主将、高校では学級委員長を務めた。1200人以上が焼香に訪れた。将来は家業を継ぐつもりだったこと、不登校の友人を毎朝誘いに行っていたこと……。弔問客の話から、短いながらも立派に人生をつむぎあげてきた息子を誇らしく思うとともに、その何倍もの悔しさに心を砕かれた。
 「なぜあの時、外出を止めなかったのか」。麗子さんは自分を責め、体調を崩しても「早く浩貴の所へ行ける」と、病院に行かなくなった。父吉彦さん(54)は仕事が手につかず、会社は大赤字を出した。
 「同乗者がおったらしい」。人づてに聞いた両親は「その人が運転を止めていれば、浩貴は救われたのでは」と疑問を抱いた。だが警察で、同乗していた元上司は「飲酒運転のほう助罪には当たらない」と言われた。運転手は何度か謝罪に来たものの、同乗者は一度も姿を見せず、「せめて法廷で浩貴に謝って」と昨年9月、民事提訴した。
 判決を受け、吉彦さんは「運転することを知りながら酒を飲ませた人の責任が問われる社会になれば、こんな悲しみは減るはず」と話す。だが一方、高卒者の平均賃金をもとに浩貴さんの「いのちの値段」を算定していたことに対し、浩貴さんが「僕を大学に行かせてくれへんのか」と訴えているように思え、今月4日、大阪高裁に控訴した。

【写真】 サッカー仲間がボールに書いた寄せ書きやポケットベルは、両親の大切な宝物となっている   

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毎日新聞 2000年12月26日 大阪

[やさしい街に]子供とクルマ社会 
歩道分離信号増設へ 「人命優先」に期待
被害者遺族、署名運動実った   
             
 「青信号で横断する歩行者の命を守るのは国の責任なのに、今の信号はロシアンルーレットのようなもの」。横断歩道を青信号で横断中に、同じ青信号で右左折してきた車にはねられる現状を、東京都八王子市の病院職員、長谷智喜(ともき)さん(47)は、そう訴え続けてきた。そんな事故をなくそうと、警察庁が歩車分離式の信号機の普及に乗り出したことに、長谷さんは期待をにじませる。
同様の事故で我が子を亡くした遺族や、通学路の安全確保に取り組む教育関係者からは「車より人命優先」に転換を始めた交通行政への期待が高まっている。 【江刺正嘉、磯崎由美】       
 長谷さんの長男元喜(げんき)君(当時11歳)は1992年11月、登校途中に横断歩道を青信号で渡っていた時、やはり青信号で後方から左折してきたダンプカーにひかれて死亡した。
 長谷さんは悲しみの中で元喜君の事故について考え続けた。「青信号で人と車を同時に通す危険な信号機こそが事故を招いた」と思い至り、歩行者の横断中は車を右左折させない歩車分離式の信号機の設置を求める署名運動を始めた。
 警察庁の方針について、長谷さんは「ドライバーの注意力で事故を防げると言い続けてきた警察が、やっと構造的な危険性を認めてくれた。事故現場を徹底的に研究し、ぜひ事故防止に役立つ信号システムにしてほしい」と期待を寄せる。
 また、通学路の安全確保に取り組んでいる大阪府教職員組合も歓迎する。豊中、東大阪の両市教組が進めている実態調査では、既に複数の学校現場から「分離信号機を設置してほしい」との要望が出ている。豊中市教組の青柳隆書記長は「車と歩行者の信号を明確に分けられれば、『信号を守るように』と安心して教えられるようになる」と話す。
 長谷さんは、自らのホームページ(http://www05.u―page.so―net.ne.jp/kb3/t―hase/)などで分離信号機の大切さを紹介している。
 
近畿の横断中死者3年で76人 
              
 信号機のある横断歩道を横断中、右左折車にはねられた死傷者数について財団法人交通事故総合分析センターは、都道府県別データを初めて公開した。近畿2府4県では、1997年1483人(うち死者25人)、98年1653人(同29人)、99年1464人(同22人)。死者は3年間で計76人に上る。建設省は危険な交差点の改善事業などを進めているが、歩行者と右左折車が同時に青信号になるという信号機のサイクルそのものが恒常的に事故を生んでいる実態が明らかになった。

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毎日新聞 2000年12月16日 大阪

[やさしい街に]子供とクルマ社会 
大阪府豊中市教職員組合が通学路チェック

【写図】 有
 集団登校する児童のわずか数十センチ横を、車が1台、また1台と走り抜ける。大阪府豊中市教職員組合(青木正三委員長、約900人)が今月から始めた通学路のチェックで、次々と危険個所が明らかになっている。車の急増に悩む同市岡町北3、克明小学校(瀧健三校長、児童数345人)では、歩行者専用道路に指定されている狭い道を車がクラクションを鳴らして通っていた。同市教組は「調査を広げ、何らかの方策を考えなければ」と、予想以上の実態を深刻に受け止めている。 【佐藤浩、磯崎由美】        
 今月7日朝。同市教組の青柳隆書記長(47)と、克明小の平井良明教諭(49)、江尻暁子教諭(35)の3人が、同市玉井町、末広町の通学路を歩いた。校区内では過去5年間で登下校中の事故はないものの、それ以外に児童が負傷した事故が14件あり、このうち2件は今年起きている。
 末広町では道幅は狭いところでは約4メートルしかない。しかし、多い時には数十秒ごとに1台の車が通る。「危ないで、もっと端寄りやー!」。江尻教諭が思わず叫んだ。本来、この時間帯は居住者ら許可車以外は通行できない歩行者専用道路だが、実際には乗用車、軽トラックなどさまざまな車が通り抜けていた。
 同小東側を走る阪急宝塚線の連続立体交差事業に伴い、昨年8月、高架のすぐ西側の市道が北行き一方通行になった。このため学校の北側の通学路が、南への抜け道になり車が急増しているのだ。
 ここを登下校する6年生の女子(12)は「1年ぐらい前から車が増えた。私は怖いと思ったことはないけど、(一緒に歩く)1年生が危ないなあと思うことはよくある」。4年生男子(10)も「角を曲がって(通学路に)入ってくる車とぶつかりそうになったことがある」。児童のほぼ半数の約170人が、この通学路を使っている。
     ◇                        
 豊中市教委のデータによると、市立幼稚園、小、中学校に通う子どものうち、毎年、平均約40人が交通事故に遭っている。事故の約3分の1は登下校中に起きている。今月も15日に市道交差点で放課後、小2男児が乗用車にはねられ死亡する事故があった。
 同教組は年内に41校の市立小学校のすべてで、教職員らが危険な個所がないかを調べ、年明けに結果をまとめる方針だ。
◇危ない道路と子どもの交通事故について、情報やご意見などをお寄せ下さい。手紙(〒530―8251 住所不要)かファクス(06・6346・1736)、Eメール(o.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp)で、「クルマ社会取材班」へ。
■写真説明 車の流れが変わり危険が増した克明小の通学路。登校の様子を調べる豊中市教組のメンバー =三村政司写す     
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毎日新聞 2001年1月27日 大阪
 [やさしい街に]子どもとクルマ社会 
 阪南市立貝掛中通学路再び


【写図】 有
  阪南市立貝掛中学校の通学路が、車の通行禁止時間帯に「抜け道」になっていることを書いた1月3日の記事=写真=について、この中学校に子どもが通う母親から、左のようなファクスをいただきました。
 記事を書いた記者として、私は阪南市の岩室敏和市長を訪ね、問題の通学路を視察してもらった上で対策などを聞きました。
     ×                        
 岩室市長が現場を訪れたのは今月22日。この日、通学路が自動車通行禁止となっている午前7時半から1時間に、違反してまで通ろうとした車は、まだ18台もあった。
 「すみませんが、今の時間帯は通行禁止で、ここは通れません。
Uターンしてもらえないでしょうか」             
 岩室市長は、自分から1台ずつに声を掛けて方向転換を促した。
12台は渋々ひき返したが、残り6台は「どうしても急ぐから」「次回からはきちんと守るから」などと言いながらそのまま突き進んだ。中には、岩室市長の話を途中までしか聞かずに無視して突っ走る車もあった。
 「道路幅も狭いし、本当に危ないな」            
 通学する中学生の横を車が無理やり通り抜けていく光景に、岩室市長は厳しい表情だ。市長は約10人の生徒に「入ってくる車は多いですか。危険な思いをしていませんか」と質問。生徒らは口々に「車が多くて怖い」と訴えた。
対策検討を約束                       
 「子どもたちは市にとっても宝。学びやすく、安全な環境を作るのは、私たちの責任だ」と現場を訪れた感想を話し、「危険なことがよく分かった。通行禁止を運転手に知らせる看板を通学路に設置するなど、行政として何ができるかをさっそく検討したい」と約束した。
 一方、泉南署も1月中旬以降、現場で本格的に違反車両の検挙に乗り出し、これまでに約30台を道路交通法違反で検挙した。今後も厳しい取り締まりを続ける方針だ。
 【玉木達也】                       
◇事故起きないと行政は動かないのか             
 私たち親もPTAを通じ、毎月、通学路にポイントを決めて立ち、交通指導をしています。進入禁止を無視して通る車のドライバーから、ば声を浴びせられることが何度かありました。子どもたちは毎日、こんな嫌な思いをして通学しているのかと考えると、心が痛みます。昨年6月から竹村さん(泉南署の警察官)がほとんど毎日立ってくれて、車が減ってとても喜んでいます。
 でも、大阪府も、阪南市も「生命の大切さ」を子どもたちに問うのであれば、こんな危険な通学路を何とかして欲しいです。議会で何度も取り上げられても、市は予算がないからと、いつも後回しです。生命にかかわる事故が起きない限り、行政は動いてくれないのでしょうか。 <母親のファクスから>            
◇情報をお寄せください                   
 堺市の泉北ニュータウンに住む男性から「自宅近くの道路はかなりの坂道で、不法な信号無視だけでなく、ブレーキを踏んだ後に停止線をオーバーランして事故を起こす可能性が大きい所です。歩道橋設置を市などに要望しています」という手紙をいただきました。
 実際に住民運動が実って通学路に歩道橋や子どもの安全を守るための設備などができた体験談や、緊急に対策が必要な現場の情報などをもとに、記者が現場に向かいます。あて先は、手紙(〒530―8251、住所不要)、ファクス(06・6346・1736)、メール(o.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp)です。 【篠田直哉】               
(次回は2月8日、掲載予定です)              
◇情報募集                         
 商店街の大売り出し、クリアランスセールなど、お買い得情報を募集します。地域や自宅でガレージセールやフリーマーケットを計画している人も、どしどしどうぞ。〒530―8251(住所不要)毎日新聞大阪本社社会部「得しまっせ」係(ファクス06・6346・8186)へ。

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毎日新聞 2001年3月15日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
少子化なのに減らない交通事故


 登下校時間帯のスクールゾーンに多くの車が進入するなど危険な通学路の問題が14日の大阪府議会の警察常任委員会で取り上げられた。府警は4月の新入学期に通学路の違反取り締まりに力を入れるほか、歩行者が横断中はすべての車を止める「歩車分離式信号機」の普及に取り組む姿勢を示した。事故の遺族らは「通学路は安全でなければならない」と交通環境の改善に注目している。
 大阪府警のまとめでは、登下校中の児童の死傷者数は1991年から10年間で2083人(うち死者8人)。府内の公立小学校の児童数は10年間で11万人減っているが、死傷者数は98年186人▽99年215人▽2000年210人――と毎年200人前後で推移している。
 民主党・府民ネットワークの西脇邦雄委員が「児童の安全対策が抜け落ちていないか」と質問。府警の十河(そごう)昭男交通部長は、登校時間帯の通行禁止規制を府内1429カ所で実施しているものの、違法に進入する車が多いと指摘。「新入学期と春の全国交通安全運動の時期に、可能な限り制服警察官を通学路を含む街頭に配置する」と決意を示した。
 府内では99年1月、岸和田市立大芝小1年、西浦惠ちゃん(当時7歳)が登校中に横断歩道を青信号で横断中、右折してきたバキュームカーにひかれ死亡した事故があった。この事故に触れた西脇委員の質問に、十河部長は府内179カ所で導入している歩車分離式信号機が「事故防止に有効」と認め、「道路構造や交通量など条件が整った場所で取り入れたい」と積極的に導入する考えを示した。
 通学路問題が府議会で取り上げられたことについて、惠ちゃんの父義朗さん(38)は「娘の事故でようやく、現場の歩道や信号機が改善されたが、議会や行政がもっと早く動いてくれれば、という悔しさでいっぱいだ。被害者が出る前に改善してほしい」と話した。 【磯崎由美】                      
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毎日新聞 2001年3月28日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
大阪府公立小通学路調査 要望2校に1校
交通危険個所 改善4割に満たず


 通学路の交通量が増え児童の登下校が危険になっている問題で、大阪府教職員組合(田渕直委員長、1万6000人)は27日、府内の公立小学校の通学路実態調査結果を発表した。2校に1校が事故現場や危険個所の改善を要望しているが、実際に改善されたのは要望している件数の3分の1程度にとどまっている。
 調査は2〜3月、大阪府高槻市、八尾市など府内22市2町の509校に実施。大阪市を除く府内の公立小の4割近くにあたる282校が回答した。過去数年に起きた事故は把握できた範囲で179校計514件。このうち15件が死亡、8件が後遺障害の残る事故だった。事故の3割は登下校時に起きていた。
 問題点では、歩道と車道の区別がない場所が約280カ所、違法駐車が多く危険な場所が約220カ所挙げられた。幹線道路の抜け道となり危険な道も約220カ所で、そのうち約20カ所は進入禁止が守られていない。個別には、「違法駐車が多く、車道を歩かざるを得ない」「歩道がなく、車道にはみ出て信号機が変わるのを待っている」「溝にふたをしただけの歩道で、足の不自由な児童は不安」「ダンプの通行量が増え、親が迎えに来ている」――などの報告があった。
 横断歩道や信号機が必要な場所はいずれも約130カ所。歩行者が横断中はすべての車を止める「歩車分離式信号機」などが必要な交差点は、51校で計67カ所あった。
 危険個所の改善は現在133校で計345カ所を要望しているが、ここ数年間で実現したのは118カ所。事故現場が改善されたのは34校で、事故のあった学校の2割弱だった。また、「信号機設置を要望しているが、地主の同意が得られない」「通行規制を協議したが、全住民の同意が必要とのことで実現しない」など、地域住民の意識も大きな壁となっている。
 調査結果を受け、新居晴幸副委員長は「通学路の危険性を再認識した。調査を基に府内の5〜6カ所で自治会やPTAも参加した協議会をつくり、改善に取り組みたい」と話している。

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毎日新聞 2001年3月6日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
大阪教組通学路調査 道路環境は年々悪化


 通勤のマイカーが次々と流れこみ、歩道は違法駐車で占拠されている。大阪府教職員組合が豊中、東大阪の両市で実施した小学校の通学路実態調査で、登下校中の児童を取り巻く道路環境が年々危険になっていることが明らかになった。「車の量が急増し、手の打ちようがない」「どこで事故が起きてもおかしくない」。クルマ優先、依存の都市構造や市民の意識が子どもたちの安全を脅かしている。 【磯崎由美、山田英之】                 
◆一方通行、幅4メートル                  
 関係者が「大事故が起きないのが不思議」と口をそろえるのは、東大阪市大蓮南の市立大蓮小学校の通学路だ。在校生約300人のほとんどが通る一方通行の道は幅約4メートル。中央環状線につながる八尾街道に出る一方通行路で、信号機もほとんどないため、多くの車がスピードを出して通り抜ける。
 大型車も多く、民家の壁にへばりつくように登校する児童たちの姿に、保護者の1人は「毎日わが子を戦場に送り出すような思い」と気をもむ。利田盛次教頭は「せめて登校時間帯だけでも進入規制をしてもらうか、一方通行の方向を変えてもらえれば、抜け道として利用する車も減るのでは」と改善に期待する。
◆増加する交通量                      
 通学路が幹線道路の抜け道となって悩んでいる学校は、回答したうち3分の2に上った。
 豊中市原田元町の市立原田小学校では、近くの阪急宝塚線曽根駅が高架化され、踏切待ちが解消されたため、交通量が増加。PTAが午前7時半から8時半の1週間の交通量を調査したところ、一昨年487台だったのが、昨年は2843台と約6倍に急増した。
 ボランティアで毎朝交通指導に立っているホームヘルパーの岡野寿美子さん(69)は「速度制限を守る車はほとんどなく、青信号のうちに交差点を渡ろうと加速する車も多い」と指摘する。
◆危険な交差点                       
 児童が信号機を守り、横断歩道を渡っていても、同じ青信号で右左折してくる車とぶつかるという構造的な事故もある。
 校門脇の角で幹線道路が交差する同市豊南町東の市立高川小学校では、昨年、この交差点で登校中の児童が左折車と接触する事故があった。現場は近くの工場に出入りしたり、高速道路のインターを目指す大型車も多い。朝はさらに通勤のマイカーで大渋滞だ。
 以前から事故が多く、辻本昌枝校長は「このままでは大事故につながりかねない。ますます渋滞するかもしれないが、スクランブル交差点になれば事故は減るはず」と、歩行者優先の改善を訴える。
■写真説明 「危ない」。頻繁に車が通る道路には児童の登校の間、PTAが監視に立つ =東大阪市大蓮南で5日午前、河内安徳写す                             

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毎日新聞 2001年4月6日 大阪

[やさしい街に]子どもとクルマ社会 
交通取り締まり 大阪・枚方市の小学校周辺で

【写図】 有
 「安全な道を通学してほしい」――。春の全国交通安全運動が始まった6日、大阪府枚方市の市立樟葉南小学校の入学式に合わせて、府警交通機動隊と枚方署が、周辺の通学路で交通取り締まりを実施した。大阪・京都府境の住宅街にある同校周辺は登校時にも車が通学路を抜け道として利用し、児童が危険な状況になっている。母親らに連れられて真新しい洋服で入学式に向かった新入生は、白バイ隊員に見守られながら、笑顔で校門をくぐった。
 同小周辺は一方通行の道が多く、学校東側の市道が車の抜け道になっている。このため、大阪府公安委員会は1980年、地元の要望を受け、市道約300メートルを登校時間帯(午前7〜9時)に車両の通行禁止道路に指定した。しかし、規制を守るドライバーは少なく、昨年4月には同校卒業生の女子高校生が車にはねられる事故も起きた。
 毎日新聞が今年1月、樟葉南小の通学路の現状を取り上げたことをきっかけに、枚方署も定期的に違反車両の指導・取り締まりに乗り出し、通行禁止の立て看板や路面に「通学路」の表示をペイント。違反車両は減ってきたが、現在も約100台が通過するという。この日も乗用車やバイク計51台の違反車両が反則キップを切られた。
 入学式で石田勉校長は「安全に学校に通えるよう警察も力を貸してくれました。楽しく元気に学校に来てください」とあいさつした。 【猪飼順、山田英之】 
    ◇ 
 大阪市中央区の大阪城公園では、午前10時から約800人が参加してイベントがあった。交通事故で視力を失いながらも、陸上競技の短距離選手として活躍する斉藤晃司さん(27)は「自分が交通事故に遭ってみて、だれもが被害者にも加害者にもなる身近なものだと思った。それを常に頭において、交通安全の意識を高めてほしい」と訴えた。
 大阪府内の交通事故発生件数は年々増加しており、今年3月末現在、昨年同期より644件多い1万4256件になっている。 【坂口佳代】 
■写真説明 春の交通安全運動の初日、入学式が行われる樟葉南小学校正門前で新入生に交通安全を呼びかける枚方署員ら=6日午前9時半、小関勉写す 

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