東京高裁 甲 準備書面(一)平成10年4月1日

平成九年(ネ)第六〇三九号 損害賠償請求控訴事件

控訴人 長谷智喜 外一名

被控訴人(被告)東京都 外二名

平成一〇年四月一日

右控訴人ら訴訟代理人

弁護士 古田兼裕
弁護士 古賀健郎
弁護士 山寺信之

東京高等裁判所 第一四民事部 御中

準備書面一

第一 控訴の理由

一 損害について

1逸失利益について 

2慰謝料について

3葬儀費用について

4被控訴人(被告)東京都の瑕疵について

 原審は、被控訴人(被告)東京都の本件信号機の設置にかかる瑕疵につき、これを否定する。

 しかし、本件交差点に存する危険性ならびに非分離信号機が本件交差点に設置された不適正さについては、控訴人らが原審において詳述してきた如くであり、歩行者と車両とを同じに交差通行させるという事故の危険性を高く孕んだ本件非分離信号機の設置につき、被控訴人東京都に管理責任を問わない原審の判断は歩行者の注意によっては回避出来ない交通事故発生の惧れそのものに目を瞑る非消極的な判断に他ならず、審理不尽の重大なミスが存在するものである。

 まず、原判決では、「昭和五十五年から現在までの間に、本件交差点の周辺で、非分離信号交差点における右左折車両と横断歩行者との類似の交通事故が数件発生し、歩行者に死亡等の重大な被害をもたらしていた。」(二〇頁一〇行目〜)旨認知し、「原告らの主張するように、分離式信号に改めれば、右交通事故発生の確率が減少することが予想される。」(二七頁一〇行目〜)までと言及していながらも、信号機の安全確保性に関する是非につき絶対的安全の具備の必要性を否定し、本件交差点は・・・・事故が多発していたこともなかったのであるから、通常存する二現示方式の信号機と比較して特に高度の危険性を有していたとは認められない。」(二八頁九行目〜)とする。正に矛盾の存するところである。

 原判決でも認知した控訴人らの調査による周辺交差点での類似事故は、本件交差点と環境も交通量もよく似た交差点であり、こうした交差点に非分離信号が設置されたうえで発生した歩行者被害事故は、本件交差点に関しても十分起こり得るものとして考慮されるべきものである。にも拘わらず、本件交差点の当該事故は「たまたま」のものであるとし、さらに分離信号に改めれば事故発生の確率が減少されることが確実に予想されることを認めながらも、信号機に対して課す安全の絶対性を非常にゆるやかに解釈して、本件交差点における分離信号設置の必要性を否定している。これらの判断経緯は、現実に立場こそ十分に考慮すべき基本姿勢より大きく外れたものと言わざるを得ない。

 さらに原判決では、「本交差点の分離信号要望運動がなされているが、これは・・・被告東京都の行政の範囲であるから・・・・これらの当否については、当裁判所では意見を述べる意志も資格もない」(二九頁六行目〜)と締めくくっている。

 行政と司法の範囲区分という観点では確かに原判決の記すとおりであるが、控訴人らが裁判所に考慮を望んだのは、分離信号運動にどれだけの人々が参与し、歩行者、特に子供らの生命の安全を切望して分離信号設置を必要とする周辺住民の声がどれだけ大きいものであるかということをご理解頂くということであり、行政における管理瑕疵が現に存在することを踏まえての適切な判断を是非とも下されたいと願ったからにほかならないのである。

 控訴人らは、高等裁判所におかれて「意志とか資格」でなく、本件交差点の現存する危険性から目をそらされること無く、十分に審理を尽くされることを切に希望するものである。

第二 まとめ

 以上のことから、控訴人らは、損害額に関する裁判所の適正な判断を望むとともに被控訴人東京都に対しても適切な判断を下されることを求めるものである。

以上


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