甲 準備書面(三)平成9年3月13日

平成七年(ワ)第二六○八号 損害賠償請求事件

原告 長谷智喜 外一名

被告 Y石産  外二名

平成九年三月一三日

右原告ら訴訟代理人

弁護士 古田兼裕

東京地方裁判所八王子支部

民事第三部合議係御中

準備書面(三)

被告Y石産株式会社外一名提出の平成七年十二月二一日付答弁書に対する反論

一 事故態様について

 被告らは本件事故の態様につき概ね認めはしながらも、「交差点を左折する際に、周囲の安全に意を払ったものの・・」と述べている。しかし、被害者亡元喜は歩行者として最も模範的な横断の仕方を行っているのである。

 これに対し被告Wは、亡元喜を背後から見える位置にいたにも拘わらず、既に信号待ちの時点で、まず最初に横断を始めた亡元喜の妹を見落とし、更にその後を横断する亡元喜を見落とし、その結果、亡元喜を衝突、死亡せしめたものである。(甲第一六号証・事故検証図)(甲第一七号証・被告人供述調書)(甲第三号証・陳述書)。

 従って、本件事故は、常軌を逸した被告Wの不注意によって何の罪もない被害者を死亡せしめたものであるにも拘わらず、被告Wには反省の気持が全く見えないのである。原告は、被告Wが注意を払っていたとする主張を強く否認するものである。

二 加害者側の誠意について 

 他方、被告らは原告らとの交渉の経緯にも言及し、「誠意をもって対処した」「謝罪に努めた」と主張するが、実際の行為とは相違するものである。被告らに於いては、自らの不注意、過失を全面的には認めようとせず、唯だひたすら保険会社の背後にまわって身を隠し、己の身の保全行為に終始していたのみであった。被告Wの謝罪は、儀礼的な初期の二回のみであり、その後の同人の供述は「被告人供述調書」記載のとおりであった。被告らは加害者として被害者側にとるべき行為を行わなかったのである。そのような状況のなか、原告らは、事故後も続ける被告らの執拗な嘘や偽善行為、誠意のなさ、謝罪をみせようとしない対応に対し、悲嘆のなかで耐えてきたのである。

三 原告らの心情等について

 原告らは幼き息子を死亡せしめられ、やむなく亡骸を葬り、辛い墓参りを生涯に渡って強いられることとなったのであるが、この墓石費用ひとつとってみても、被害者に自腹を切るよう求める被告らの賠償のありかたに、果たして誠意と呼べるものがあるのか疑問である。

 原告らは、亡元喜が幼年期を過ごし、また母親である原告かつえが勤務する保育園を望める丘に墓石を建立したものであるが、その基石費用ひとつに於いてさえである(甲第一八、一九号証)。原告らは、本件訴訟に於いて過大なる請求をなすものではなく、適正な賠償を望んでいるだけである。被告らに於いては、その主張どおり「誠意をもって」対処されたいと、切に望むものである。因に、原告かつえは、当時幼かった亡元喜の妹の育成のために三年の間離職せざるを得ない状況にあるものである。

                               以上


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