甲 準備書面(一)平成8年6月13日 平成七年(ワ)第二六○八号 損害賠償請求事件 原告 長谷智喜 外一名 被告 W 外二名 平成八年六月十三日 右原告ら訴訟代理入 弁護士 古田兼裕 東京地方裁判所八王子支部 民事第三部合議係御中 第一 被告東京都提出の平成八年四月一八日付準備書面(一)につき、原告らは次のとおり反論する。 一、本件事故は、被告東京都の主張するとおり、加害者である被告Wの一方的な過失によって発生したことに異論はないが、本件事故が発生した交差点は従前より同種事故発生の危険性が高かったものであり、この危険性は分離信号を設置することにより回避できるものである。すなわち、被告Wのように通行者を見落とすような運転者があったとしても事故を未然に防ぐことが出来た筈である。被告東京都は、行政対策として事故防止策に積極的に取り組むべきだったのであり、被告Wの過失を主張するに終始するのは、結果として自らがなした事故対策の瑕疵を隠蔽していると言っても過言ではない。 二、以下、第二「原告らの主張に対する反論」第二項に対し個別に言及する。停止した位置からの前方左右の見通しの良好については、本件事故に関係するものではない。前方左右の見通しがよければ事故発生率が少ないというのであれば、本件交差点を含む美山周辺では事故の発生率が少ない筈である。しかし、現実には多くの歩行者がこの地域で同種の事故の被害に遭っているのであり、本件事故も前方左右の見通しの良い場所において発生しているのである。 2 歩行者の絶対量が少ないことは事故発生率に間係がない。本件交差点に関しては逆に同種事故の発生率が高いと考えられる。本件交差点及びその周辺では、前記のとおり複数の歩行者が事故により死亡しているのである。本件事故も同じく歩行者の少ない当該交差点にて発生している。 3 この車両通行量のなかで本件事故は発生している。他の類似事故も同様である。なお、本件交差点では、ここを通過するダンプのほぽ100パーセントが美山採石場出入りのために右左折を行っている。 4 本件交差点における横断歩行者に係る交通人身事故は主張のとおり一件であるが、この周辺地域の同種の交差点においては、前記のとおり複数の無辜の横断歩行者が死亡しており、八王子市内においては毎年数名の横断歩行者が事故死をしているのであり、更に全国に目を向ければ多数の死亡者が確認される。被告東京都は、極めて狭い範囲での調査のみを行い、自らに都合のよい事実のみを主張しているものである。 5 本件交差点は、地域的にみても構造的にみても大変危険度の高い交差点であると言える。本件事故の原因の一部は、人を見落とす加害者の進入、つまり歩行者において事故発生の回避不可能な状況下における過失車両の進入と、横断歩行者との交差という事実である。 三、原告らは、被告東京都の主張の一部(加害者である被告渡辺の一方的な過失による事故)は認めるが、信号機の設置及び管理の瑕疵によって発生した事故でないとしている点につき反論する。 書類目次へ |