陳述書(調査書1)平成8年9月12日 
上川橋交差点・南新町交差点の交通調査と危険度の比較について
  
陳述書

裁判長 殿

平成七年(ワ)号二六〇八号 損害賠償請求事件

                      
上川橋交差点・南新町交差点の交通調査と危険度の比較について
 
 みだしの調査より、上川橋交差点の危険性を申し述べます。

 平成八年六月十三日、書記官室において、都代理人は児童蹂躙事故の発生した上川橋交差点での分離信号改善拒否の理由を、「上川橋交差点は危険がない。」と主張されました。 

 私たちは、上川橋交差点における歩行者への危険性の高さを立証するため、次の調査を行い比較検証致しました。

一、上川橋交差点交通量、交通流調査
二、南新町交差点交通量、交通流調査 
三、上川橋交差点・南新町交差点、歩行者への危険度比較検証

一、上川橋交差点交通量調査

(一)資料綴り説明

   頁

   @   表紙

   A〜B 調査方法の説明

   C〜E 上川橋交差点、戸沢街道(美山方面)からの交通量調査

   F〜H 上川橋交差点、秋川街道(八王子方面)からの交通量調査

   I〜L 上川橋交差点、秋川街道(五日市方面)からの交通量調査

   M   上川橋交差点交通量調査集計

   N  調査結果のグラフ ^ 秋川街道、車輌右左折状況
               _ 戸沢街道、車輌右左折状況

   O  調査結果のグラフ ` 歩行者と車輌の混在状況
               a ダンプと歩行者の構成比

   P  調査結果のグラフ b ダンプの右左折比率

   Q  平成7年平成と5年の上川橋交差点調査、比較表

   R  平成7年平成と5年の上川橋交差点調査結果、比較グラフ

     *危険な大型車両は、グラフを赤色に着色しております。

(二)調査内容概略

 上川橋交差点の交通量、交通流調査は、左記の日時に実施致しました。

  第一回 平成五年一〇月十八日(月)(六時から十七時四十五分まで)
  第二回 平成七年 三月 六日(月)(七時五十分から十二時まで)

 平成七年の調査は、ビデオ撮影を実施しており、交通流を計測した綿密な調査であると考え、平成七年の調査を中心に整理いたしました。

 調査の内容は、信号一サイクルごとにカウントした、普通車とダンプ車輌の直進、右左折別台数、及び横断歩行者の人数です。

・調査状況は、資料ABに明記した「交通量調査配置図」のとおりです。
・調査資料の方面の読み方は、資料B「交通量調査配置図」図示のとおりです。
・調査記録は、C〜Lに方面別表として記載いたしました。
・集計は、M「上川橋交差点交通量調査集計」に記載致した通りです。
・集計結果をより見やすくするため街道別に車輌右左折状況、歩行者と車輌の混在状況、ダンプと歩行者の構成比及び交差点通行ダンプ右左折比率をまとめ、N〜Pにグラフとしました。
・平成七年、平成五年の調査を比較し巻末に綴りました。平成五年は、昼間全体の交通量の調査、平成七年は、半日の調査ですが、酷似した同傾向の交通量が見られ、調査の信頼性が高く評価されることと思われます。

(三)上川橋交差点交通量、交通流調査結果

・上川橋交差点の昼間通行車輌は、平5年の調査(六時から一七時四五分)
  一般車両七四七〇台、ダンプ車輌八二八台、合計八二九八台でした。
・平七年の調査(七時から一二時)は一般車両三三五九台、ダンプ車輌三九三台、合計三七五二台でした。
・歩行者の数はきわめて少なく平五年の調査六八名、平七年の調査三〇名でした。
・当該交差点の全車両に対し混在するダンプ車輌は、約一〇%です。
・大型ダンプの九七%が、右左折車輌であることが判明いたしました。

二、南新町交差点交通量調査について

 上川橋交差点の危険度を考察するには、比較対象の交差点が必要と考えられます。
 比較的歩行者への危険度が低い交差点として、南新町交差点を調査致しました。

(一)資料綴り説明

   頁

   @  表紙

   A 調査実施方法の説明 

   B 南新町交差点概要、(位置、交差点構造説明、下部に集計結果)

   C 市内「南新町交差点」案内図

   D 南新町交差点車輌通行量調査表^ 八王子駅方面から、高尾方面から

   E 南新町交差点車輌通行量調査表_ 国道二十号方面から、線路方面から

   F 調査結果グラフ ^ 南新町交差点、東西道路車輌右左折状況
             _ 南新町交差点、南北道路車輌右左折状況

   G 調査結果グラフ ` 南新町交差点、交通種別混在比較表
             a 南新町交差点、歩行者と大型車両の構成比

   *危険な大型車両は、グラフを赤色に着色しております。

(二)調査内容概略

 当該交差点の調査は、平成七年五月三〇日、B(一三時から一四時)に実施致しました。

 調査の内容は、

・普通車及びダンプ車輌の直進、右左折別台数、及び横断歩行者の人数です。
・調査状況は、ABに明記した「交通量調査配置図」のとおりです。
・調査資料の方面の読み方は、Bの「交通量調査配置図」図示したとおりです。
・調査記録は、C〜Lに東西と南北方面別として記載いたしました。
・集計は、M「上川橋交差点交通量調査集計」に記載致した通りです。
・調査結果をより見やすくするため、街道別の車輌右左折状況、歩行者と車輌の混在状況、ダンプと 歩行者の構成比及び交差点
  
通行ダンプの右左折比率を、N〜Oのグラフと致しました。

(三)南新町交差点交通量・交通流の調査結果

 南新町交差点は、原告の勤務地の近くでありよく承知したところです。この交差点は、通勤時間帯においてもほとんど渋滞はありません。時間帯によって極端な通行車輌の 増減が見られない交差点です。

 南新町交差点の一時間(十三時から一四時)の通行量は、Bの集計のとおりでした。

・大型車両は、微量です。
・交差点全体の一般車両は七六四台、大型車両は五台、合計七六九台でした。
・大型車両は、交差点近くの工事現場のため出入りしていたものらしく、右左折車輌でしたが記載のとおり五台でした。
・歩行者の数は、少ないが適度に通行が見られました。自転車を含む横断者は七五名でした。なお、調査時刻の関係から、歩行者の多くは大人でした。
・この交差点の主道路は、富士見通り(八王子駅ー高尾)で直進車輌四〇四台、右左折車輌二八台(七%)、歩行者五五名でした。
・従道路にあたる南北道路は、一方通行を有し、直進車輌一四二台、右左折車輌 一九〇台、歩行者二〇名でした。右左折車輌は、直進車輌より多く五七%と直進車輌より多いが、大型車両は皆無で交差点に進入する車輌の速度も低い。

・交差点での右左折車輌の大半は、国道20号方面から一方通行にくる車輌が、富士見通りに進入するためのものでした。

 南新町交差点は、歩行者にとって比較的危険度の少ない交差点といえます。

三、上川橋交差点・南新町交差点、歩行者比較検証について

(一)資料綴り説明

   頁

   @  表紙

   A ^上川橋交差点(秋川街道)・南新町交差点(東西道路)車輌右左折状況

   B _上川橋交差点(戸沢街道)・南新町交差点(南北道路)車輌右左折状況

   C `上川橋交差点・南新町交差点、交通種別混在比較表

   D a上川橋交差点・南新町交差点、歩行者と大型車両の構成比

 (二) 両交差点の比較結果検証

 両交差点での調査は、調査時間が違うため完全な比較は出来ませんが、車輌別交通量・交通流の検証により、同じ信号制御方式 をもちいた両交差点の危険度の違いを立証するには十分なものと考えます。

グラフ色について

「白色」歩行者と併走する直進車輌は歩行者と交差しないため、歩行者にとって安全性の高い車輌と考え「白色」で表示いたしております。
「青色」注意すべき右左折車輌は、「青色」で表示いたしております。
「赤色」最も危険性が高い大型車両は、「赤色」で表示いたしております。
「緑色」歩行者は緑色に表示いたしております。

【検証】

比較一、

A頁 ^上川橋交差点(秋川街道)と南新町交差点(東西道路)車輌右左折状況グラフ双方の交差点の主道路の交通流をグラフで比較した。

 南新町交差点は

・ほとんどが直進車輌で右左折車輌は少ない、右左折車輌よりも歩行者の方が多い。 
・大型車両が見受けられるが極端に少数である。

 南新町交差点は、人と車が交差の少ない比較的安全な交差点状況と言える。

 上川橋交差点は、

・直進車、右左折車輌は共に多い。
・歩行者の数は極端に少ない。 
・大型車両のほとんどは、右左折車輌である。

 南新町交差点と比較しその危険性の高さはだれの目にも明らかである。

比較二、

B頁 _上川橋交差点i戸沢街道jと南新町交差点i南北道路j車輌右左折状況グラフ双方の従道路をグラフで比較した。

 南新町交差点は、

・一方が一方通行を有するが、やはり十字路の交差点であるため直進車は多い。
・右左折車輌が多く主導路の脇道として十分な機能をはたしている。
・横断歩行者は主導路の半分以下である。
・大型車両は皆無に等しかった。

 上川橋交差点は、

・交差道路が従道路とは言え、郊外にある幹線道路のT字路交差点であるため、通過する車輌の数は多い。
・全てが右左折車輌であり、下り坂からの右左折車輌は速度が速い。
・美山採石場の出入口の道路になるため約20%近いの車輌が大型ダンプである。

 上川橋交差点は、この観点から見ても南新町交差点とは、全く危険度が違う。

比較、三

C頁 交通種別混在比較表のグラフ

 総合的に双方の交差点の、車種別、交通流別にグラフで比較すると

・南新町交差点は、直進車輌が多く危険な大型車両はほとんど混在しない。
・上川橋交差点は、右左折車輌が多く、危険な大型車両が多く混在している。
・歩行者は、双方少ないとはいえ南新町交差点では、一時間に上川橋交差点の一日分に相当する横断歩行者の数がある。

 グラフの形状から両交差点は、交通量・交通流が全く違う環境であることが分かる。

同じ信号制御の交差点とは言っても、歩行者の危険度はまったく異なる。

比較、四

D頁 歩行者と大型車両の構成比のグラフ

・歩行者と大型車両の構成比は、図示されたとおりである。
・南新町は歩行者に対して大型車両と交差する危険性がほとんどない。
・上川橋交差点は、ダンプ393台、歩行者28名、比率はダンプ93%歩行者7%、なお、393 台のダンプ車輌は97%が右左折車であることは前記に述べた通りである。

 上川橋交差点では、歩行者が横断しようした場合、常に右左折ダンプと遭遇するがダンプ車輌からは、歩行者とはほとんど遭遇しないことを意味する。漫然と運転し、人を見落とし事故を起こす右左折ダンプの加害者は、よく「歩行者がいないと思った。」「見えなかった」などと主張する。上川橋交差点は、同時発進信号制御です。横断児童への危険が高いと指摘することは当然の事と考えます。

 交差点での青信号歩行者蹂躙事故の大半は、右左折車輌による歩行者の見落としにあります、また、重大事故を発生させる最も危険性の高いのが大型車両であることは、交通工学においても記述されているところです。その原因は、車輌の構造及び、車輌運転手の質的問題にあると考えます。いずれにせよ、絶対破壊力の大きい大型車両、なかでも大型ダンプは、歩行者にとって特に危険なものと言えます。

 事実、当該事故を含めこの美山周辺での右左折蹂躙事故は、全て美山採石場出入りの大型ダンプによって発生いたしております。普通車輌に対し大型車輌10%強の道路は、幹線道路によく見られることですが、最も危険視されている多数のダンプ車輌の大半が、歩行者の少ない交差点で右左折を繰り返す。このことがこの地域の特徴であり、上川橋交差点の危険視される大きな要因です。

 都の交通量調査は、その名のとおり単に交差点を通過する車両、歩行者の数を記録し羅列したにすぎず、交差点の性質を見極め危険度を検証するにはいたっておりません。都の主張どおり、車両台数や歩行者の通行量の大小で事故発生の危険性を左右する論が正しいとすれば、本件蹂躙事故を含め歩行者の極端に少ないこの美山地域で、同種事故が度重なることじたい不自然です。

 交通事故の危険度は、車輌や歩行者の数の大小ではなく、その場所に過失車輌が発生しやすいか否かです。上川橋交差点は、大型車両が多い。ほとんどが右左折の大型ダンプです。対して歩行者はきわめて少ない。歩行者のほとんどは、見落とされやすい通学児童達です。郊外の交差点では、きわめて少ない歩行者が度々蹂躙事故の被害に遭遇しております。歩行者の危険率は「横断する歩行者数と対人歩行者死亡事故件数」の関係と考えます。従って、美山地区の交差点を町中の交差点と比較すれば、当該交差点を含む郊外の交差点は、歩行者にとっていかに高い危険率であるか判断することができます。

 私たちは、都代理人の「危険がない」と言う主張は、全く根拠のない主張であり失当であると考えます。都は、すみやかに瑕疵を認め当該交差点の危険性を認知し、事故防止策をとるべきであったと考えます。

 交通量調査からの原告主張、よろしくご配慮の程、お願い申しあげます。

      平成八年九月十二日

                       東京都八王子市

                        被害者本人実父  長谷 智喜


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