第10回口頭弁論調書(被告都証言)平成9年7月17日 平成7年ワ第2608号 第10回口頭弁論調書 証人調書 速記録 期日 平成9年7月17日 場所 東京地方裁判所八王子支部民事第三部 401号法廷 被告東京都証人 加藤信夫 被告東京都代理人(鈴木) 1、 証人の現在の勤務先はどちらでしょうか。 多摩中央警察署です。 2 多摩中央警察署での証人の職務内容を教えていただけますか。 現在副署長です。 3 階級はなんでしょうか。 警視です。 4 これまでに警察庁本部の交通管制課という部署に勤務したことがありますか ございます。 5 管制課にはいつごろからいつごろまで勤務されていましたか。 平成7年3月から平成9年3月までの2年間です。 6 交通管制課では、証人はどのような立場で、どのような仕事を担当されてましたでし ょうか 信号機施設担当管理官として、信号機の設計計画や、信号機に伴う交通規 制の事務を担当しておりました。 7 この訴訟の原告の長谷さんが、御長男の交通事故に関しまして、上川橋の交差点の信 号機が歩車分離であれば、事故は起こらなかったと、こう主張されておることは御存 じですね。 はい、知っております。 8 その本件の交通事故の後に、原告の長谷さんが警察に対して、上川橋交差点の信号機 を歩車分離式にしてほしいと、こう要望していたことがありましたか。 はい、八王子警察署に何度かお見えになったり、交通管制課に一度お見え になったと聞いております。 9 ところで、本件の上川橋交差点なんですけれども、この交差点に信号機が初めて設置 されたのは、いつのことだかご存じですか。 昭和59年に設置したと聞いています。 10 上川橋交差点の信号機の制御方式なんですけれども、どのような方式でしょうか。 二現示方式で運用しております。 11 今、二現示方式ということを証言されましたけれども、現示というのは、ういうよ うなことを意味するんでしょうか。 交差点内に異なる交通の流れがある場合、一つの流れを青信号で制御しま すが、その青信号で制御する流れのことを普通現示と言っております。 12 二現示方式の場合なんですけれども、もう少し分かりやすく説明していただけます か。 分かりやすく言うと、縦横の交通がある場合の縦の交通を流し、次に横の 交通を流すと。この縦を一現示、横を、一現示に対して二現示、こういう 言い方をしております。 13 通常の十字路を考えた場合、縦が青の時は横が赤、横が青の時は縦が赤と。これの 繰り返し、このサイクルを二現示と呼んでるわけですか。 はい、そうです。 14 上川橋交差点では、昭和59年以降、現在まで、二現示方式なんでしょうか。 はい、そのとおりです。 15 ところで、信号機を設置するばあいなんですが、交通管制課では、どのような点を 考慮して、信号制御の方式を決めるのでしょうか。 交通の安全と円滑を重点として決めております。 16 具体的には、どのような点に着目するのでしょうか。 信号機を設置する交差点の交通の状況、たとえば、車の交通量、横断歩行 者の数、又は交差点の形状。交差点の形状と言いますのは、十字路であり T字路であり見通しの悪い、良いそのようなことを勘案いたしまして、ま た付近の交通の状況、沿線の環境、こういうようなものを総合的に判断し て決めております。 17 道路の幅員とか、歩道があるかないかとか、そういう点も考慮しますか。 はい、それも重要な点になります。 18 それで、現示方式を決定する場合も、今証言されたような点を考慮すると、そう理 解してよろしいのでしょうか。 はい、そのとおりです。 19 現示方式を決める場合なんですが、どのような現示方針が基本となるのでしょう か。 通常は二現示方式が基本となっております。 20 二現示方式が基本ということなんですが、二現示のほかに、どのような現示方式が あるのでしょうか。 三現示、四現示と言う、多現示方式があります。 21 先ほど、この裁判所の前の信号機を証人にも見ていただいたんですが、この裁判所 の前の信号機などは、多現示方式の交差点と理解してよろしいんでしょうか。 五差路で交わっておりますので、二現示で流すことはできません。このよ うな場合は多現示になります。 22 そうしますと、今ちょっと証言していただいたんですが、一般的に言って、二現示 方式以外の現示方式というのは、どのような場合に設けられると言えるでしょう か。 これは、例外的に作っておりまして、今お話ししましたように、多数の道 路が交わるような場合、又は二現示で流しているような場合でも、右左折 車の交通が多い場合とか、又は横断歩行者の数が大変多いというような場 合、その現示では流し切れないような場合が出てきます。そういうような 場合には、現示を変えて三現示にすることもあります。 23 後ほど、現示方式については、また詳しく伺いたいと思うんですけれども、現在、 都内には、信号機が設置されている場所というのは、何箇所くらいあるんでしょう か。 約1万4000カ所ございます。 24 その1万4000という数字なんですが、それは23区内、三多摩地区、両地区を 含めてということですか。 はい、東京都内全部、両方を含んでおります。 25 そのうち、いわゆるスクランブル方式の信号機とか、歩車分離式の信号機が設置さ れている場所は何箇所くらいあるのでしょうか。 約400箇所ございます。 26 1万4000分の400と言うことになりますか。 はいそうです。 27 3パーセント弱ということでしょうかね。それで、歩車分離式の信号機を設置する ための基準というものがあるのでしょうか。 特にございません。 28 基準がないということは個々の交差点ごとに、その必要性を判断するということで すか。 はい、そうです。交差点ごとに、必要性がある場合、現場に行きまして交 差点の状況を見ます。交差点はすべて、同一の交差点というものはありま せん。その必要性があるかどうかを判断しております。 29 歩車分離式の信号機とかスクランブル式の信号機というのは、どのような交差点に 設置されているのでしょうか。 一般的には、駅前とか繁華街、大変歩行者の横断が多い場所、又は斜め横 断の需要が多いような場所にスクランブル形式の交差点を作っておりま す。また十字路ではなく、Y字路とかX字路とかいうように変形の交差点 で、車輌の転回速度が速いような場合、こういうような場合にも作ってお ります。もう一つは、交差点の見通しが悪く、また歩車道の区別がなく、 歩行者と車を同時に流すと、非常に危険なような場合にも、その交差点の 現場を見まして、総合的に判断して、分離式の信号機を導入する場合もあ ります。 30 要するに、交差点の形状だとか、交通量を判断して、歩車分離式の信号機やスクラ ンブル式の信号機を設置しているということでよろしいでしょうか。 はい、そのとおりです。 31 周辺道路に与える影響とか、そういう点も考慮するんでしょうか。 はい、近接している交差点があったり、間隔が長かったりとかいうような 状況が出てまいりますので、その交差点だけではなく、周囲の交差点状況 又は、道路の状況その他すべてを総合的に判断して決めております。 32 それで今、その変形交差点、Y字路とかX字路、こういう交差点では、歩車分離式 の信号機を設置することがあると、そう証言されたと思うんですけれども、X字路 交差点とかY字路交差点ではなぜ歩車分離式の交差点が必要なのでしょうか。 十路交差点と違いまして、角度が緩やかになっております。そのために信 号で発進注せた場合、転回速度が速くなります。速くなりますと、歩行者 と同時に流した場合、歩行者の安全が妨害されるような場合が出てきます ので、具体的にその交差点を見まして決めております。 33 要するに、Y字路交差点などでは、右左折車両の曲がるときの速度が速いというこ とで、歩行者が危険だから、歩車分離式にすると、そういうことですか。 はいそのとおりです。 34 本件の上川橋交差点は二現示方式であるということを、先ほど伺いましたけれど も、上川橋交差点に歩車分離式信号機を設置した場合に予想される問題点として は、どのようなことを挙げられますでしょうか。 信号待ちの時間が長くなるということが、歩行者の方も車の方も共通した 一番大きな問題点になると思います。またドライバー側から見た場合、分
離式になりますと、どうしても一現示増えます。そのたに、信号の待ち時 間が長くなりますので、慣れてきますと、信号の変わり目に通過しようと
したり、また、信号待ちしているような車の場合、交差路の信号が赤にな ったときに、無理に発進、見込み発進して通ろうとしたり、そういう状況
が出てまいりま す。 35 要するに、一言で言うと、歩行者も運転者も必要以上に待ち時間が長くなるという ことにつきるんでしょうか。 はい、そうです。 36 それでは自動式の分離信号機ではなくて、押しボタン式の歩車分離式信号機に変更 した場合に予想される問題点としては、どういうことが考えられますでしょうか。 今お話しましたのは、自動式でお話しましたんですが、手動にした場合、 操作の違いだけで、自動と問題点は共通しております。また、押しボタン を手動にいたしますとボタンを押してもすぐに変わりません。どうして も、これは現示秒数の関係で、時間待ちが長くなります。ですから、今ま で以上に長くなりますので、歩行者の方にとっても、いらいらがつのるの ではないかと思います。 (甲第十三証を示す) 37 甲第十三証は、長谷さんが、三多摩地区の歩車分離式の信号機やスクランブルの交 差点を調査した結果のようなんですが、証人はこれらの交差点、実際にご覧になっ たことがありますか。 はい、見ております。 38 では逐一、交差点、伺っていきたいと思います。まず初めに、5枚目に八日町交差 点とういのがあると思うんですが、これは八王子の交差点のようなんですが、ここ はスクランブル式の信号機が設置されているらしいんですが、この八日町交差点二 スクランブル式の信号機が設置されている理由は、どういう点にあるのでしょう か。 この交差点は、国道16号線と20号線の交わります、重要な、大きな交 差点になっています。交通の流れも、16号線、この図で言いますと、橋 本、横浜方面から、至る高尾方面と書いてございますが、こちらへ行く右 左折車が大変多い交差点になっています。駅に近いために、駅に行く斜め 横断の歩行者の数も大変多い交差点になってます。このために、交通の円 滑化と、歩行者の事故防止を図るために、ここはスクランブル交差点を採 り入れております。 39 それでは、その次の藤橋北交差点について伺います。これは、青梅郊外にある交差 点のようなんですが、この交差点は、そこの図を見ますと、T字路になってまし て、本件の上川橋交差点と非常に類似しているようなんですが、この藤橋北交差点 に、なぜ歩車分離式の信号機が設置されているのか、簡単に説明していただけます か。 この交差点ではT字路交差点になっておりますが、この道路の両側は住宅 の塀等で見通しが大変悪くなっております。また、ここの交差点は、この 地図を見ますと至青梅方向へは、大型車は通行できないことになっており ます。そのために、大型車両は、入間方面から至羽村方面への右左折車が 大変多くなります。この場合、同じ青信号で出した場合、見通しがききま せんので、横断歩道の手前に止まっておりまして発進した場合、その左 側、左折していく場合の歩行者が大変見づらくなります。 ここの場合、歩道がありませんので、ガードレール等もございません。そ のため、大変、左折巻き込みの事故等が予想されたために、歩行者の安全 と車の通行、両方を確保するために、こういう分離式信号を導入しており ます。 40 T字路であるという点では、上川橋交差点と全く同じだと思うんですが、上川橋交 差点と違う点を、簡単に説明していただけますか。 これは二つあると思います。上川橋交差点は、大変見通しが良い交差点に なっております。また、上川橋交差点の場合は、歩道が設置され、なおか つその歩道と車道の境にはガードレールがあり、確保されています。この 藤橋北交差点には、そういう状況がございません。見通しが非常に悪い交 差点、また、歩道の設備もございません。そのために、左折していく車と 歩行者の事故が予想されるために、歩行者保護を図るため、また車両の通 行を円滑にするためにここでは分離式信号機を導入しています。 41 では、次の中山式交差点、これは八王子市郊外の交差点のようなんですが、この交 差点にも歩車分離式の信号機が設置されていようなんですが、なぜ分離式の信号機 が設置されているのか、簡単に説明してください。 この交差点はY字路交差点になっております。先ほどもお話しましたよう に、Y字路の交差点というのは、車両の右左折の転回速度が大変高い交差 点になります。この交差点、至八王子方向と、至多摩ニュータウン方向、 こちらの車の相互交通が大変多い交差点になっております。また、ここの 交差点は、一部、ガードレールによる分離がございますが、歩行者の歩道 等が設置されておりません。そのために、左折、右折の車の転回速度が高 いため、歩行者の保護をはかるために、ここも分離式を採用しています。 42 では、次、佐貫交差点について伺います。この交差点は図面を見ますと、かなり変 則の五差路のようなんですが、基本的には、中山交差点と同じように、Yの字交差 点であるということから、歩車分離式の信号機が設置されているんでしょうか。 はい、そのとおりです。そのほかに、この佐貫の交差点は、この図面では ある程度角度が穏やかになっておりますが、もっと角度がくの字型に曲が っていく、見通しの悪い道路になっております。また、普通の交差点です と、横断歩道を引く場合、間隔がもう少し広く取れるんですが、この交差 点は、この高尾街道に細街路が取りつくような交差点になっておりますの で、この図面でもございますように、横断歩道は、三角形のような形で引 かざるを得ません。そのために、同じ青信号で出した場合、歩行者は、車 の青の進んでいく方向の直前を横 断するような形になります。また、こ この交差点は、歩行者の横断数が少ないために、押しボタン式を採用して いる、特殊な交差点であります。 43 では次の友田交差点について伺います。ここも図面で見るとYの字交差点ですの で、これまで説明していただいたと同じような事情があるわけですね。 はい、そのとおりです。 44 押しボタン式になっている理由は、どういうことですか。 この交差点も、大変右左折の多い交差点になっております。この図面によ りますと、横断歩道が近接しているように書かれておりますが、Yの字の 幅員の広い交差点になっておりますので、もう少し間隔が広く、転回速度 が大変速い交差点になっております。また、歩行者の横断が少ないために 押しボタン式にして、右折車、左折車の円滑を図るために、こういう押し ボタン式を、この交差点は採用しています。 45 道路の幅員が、この図で見るより、もう少し広いということですか。 そうでございますね。横断歩道の位置がもう少し広くなってると思いま す。 46 続きまして、河辺東交差点について伺います。ここもYの字交差点であるために、 歩車分離式の信号機が設置されているということでよろしいでしょうか。 はい、そのとおりです。 47 次に、本本郷交番前交差点について伺います。ここも、図面で見るとTの字交差点 なんですが、この交差点になぜ歩車分離式信号機が設置されているんでしょうか。 これは、八王子の市街地の一部の交差点になっておりますが、ここは歩道 の分離されている交差点になっています。この図面で言いますと、右側の 20号バイパス、秋川街道方面と書いてございますが、こちらのところに バイパスの大きな交差点がございます。国道20号方向からバイパス方向 へ行く車が、この交差店内に滞留するような状況が常に見られます。その ために、手前の八王子駅方向からバイパス方向へ行く右折車の流れが、大 変阻害される交差点になっております。そのために、この横断歩道を歩行 者と一緒に渡した場合、車が横断歩道に上に滞留するような状況が常に見 られますので、ここも大変危険な交差点になります。そのために、ここは 歩行者を分離した信号機を採用しております。 48 そうしますと、この元本郷交番前交差点については、これまで説明していただいた 交差点とは、ちょっと事情が違って、右折流を確保するためにと言う理由もあっ て、歩車分離式信号機を設置しているわけですね。 はい、そうです。 49 続きましては、城山大橋交差点について伺いますが、この交差点に、なぜ歩車分離 式の信号機が設置されているのでしょうか。 この図面で見ますと、T字路交差点になっておりますが、現場はYの字に 近い交差点になっております。右側の高尾方面から至美山、こちらのほう に行く左折、右折の車が大変多い交差点です。またこの道路は幅員が広く て、車の転回速度が大変高い交差点になっております。そのために、分離 式を採用して、車の流れよくし、なおかつ歩行者の安全も図っている交差 点です。 (乙第20号証を示す) 50 これは航空写真地図の写しなんですが、甲第13号証の城山大橋交差点の図面には T字路となっておりますけれども、実際は、この航空写真地図のようにYの字の交 差点なわけですね。 はい。 51 それで、右左折車両の転回速度が速いということですね。 はい、そうです。 (甲第13号証を示す) 52 では最後に、谷野街道入口交差点。この交差点も少し変則ではありますが、基本的 にはYの字交差点と、そういう理解でよろしいんですね。 はい、これもYの字交差点になっておりまして、谷野街道入口交差点は、 国道16号線に取りつくような形で、この交差点が設定されております。 この交差点の右、八王子市内方向すぐの所に、30メートルもいかないと ころに、また信号機のある交差点が設けられております。またこの国道1 6号線、八王子インターから市内方向に向かう車が、常時渋滞する状況が 出ております。そのために、手前から白矢印がついておりますが、手前か ら八王子方向へ右折していく車がスムーズに吸いこめないような状況が、 常時出てきます。そのために、右折していく車の流れを確保すると同時 に、歩行者もそんなに多くありませんので、歩行者の安全を確保するとい う、両方の意味からも、ここは分離式を採用しています。 53 要するに、今説明していただきました、甲第13号証に摘示されている交差点とい うのは、本件上川橋交差点とは異なる特殊事情があると、そういうことですか。 そういうことです。 54 甲第13号証に摘示されている交差点は歩行者の斜め横断の需要が多いとか、Yの 字交差点で、左折車両の転回速度が速いとか、あるいは、先ほどの元本郷交差点で は、右折流を確保する必要があるとかそれぞれそういった特殊事情があるので、そ れで歩車分離式の信号機、あるいはスクランブル式信号機が設置されていると、そ ういうことですか。 はい、例外的に設置している交差点です。 55 またちょっと話変わりますけれども、本件の交通事故死が発生する前に、上川橋交 差点付近の住民から、上川橋交差点が特に危険であるから、信号制御を改善して欲 しいというような要望があったことはありますか。 56 それでは、本件の交通事故後、原告の長谷さん以外、長谷さんはちょっと除外しま して、長谷さん以外から、同様の要望書や意見があったことがありますか。 ございません。 57 本件交通死亡事故が発生する前に、上川橋交差点において、交通死亡事故は、何件 発生しておりますか。 58 本件交通死亡事故後、本日までの間、上川橋交差点において、交通死亡事故が発生 しておりますか。 発生しておりません。 59 最後に一点伺います。道路交通において、どのようにして安全性というものが確保 されるのか、その辺、簡単に説明していただけますでしょうか。 道路を利用する方、歩行者、自転車、車、いろいろございますが、それぞ れの立場に立って、お互いに交通ルールを守り、お互いの立場をよく理 解して通行すれば、安全は確保されると信じております。 60 交通ルールを守るということが大事だということはわかりましたけれども、安全性 を確保する手段は、ルールを守るということなんだけでしょうか。 61 そういった道路環境を整備するということも、安全性という点では、非常に重要な 要素であるということですね。 はい、そうです。 62 しかし、やはり交通ルールを守るということが、大前提になるという理解でよろし いですか。 はい、そのとおりです。 原告ら代理人(古田) 63 先ほどちょっと最後の方の質問に対する回答で、原告の長谷以外に、この上川橋交 差点で、陳情とか、安全性を高めてほしいとういう話はなかったというのは、間違 いないですか。 私の聞いている限りは、ございません。 64 原告長谷が、陳情書の中に各人の署名を集めて、八王子警察に出したのはしってい ますか。 出されたことは聞いています。 65 その中に、賛同者として署名があったことは知っていますか。 書類は見ておりませんので、分かりません。 66 じゃ、あなたが知っているのは、現実に訪ねた人間が原告長谷だけだと、そういう ことでい いですか。 訪ねたといいますと。 67 八王子署を訪ねて陳情したのが長谷だけだということでいいですか。 私の聞いておりますのは、長谷さんが八王子警察に信号の改善を要望さ れているというふうに聞いておりますので、ほかの方がお見えになった かどうかは、私には分かりません。 68 あなたは、それ以外聞いていないと言ったから。どいうことなの、証言を変えるわ けだね。 ・・・・・ちょっと趣旨がよく分かりませんが、 69 あなたは先ほど、長谷以外の人間がだれも、この安全性について疑問を挟んだ人は いないと、そういった趣旨の発言をしたわけ。そうじゃないですか。 70 いや、あなたは限定して、それ以外にあったかと聞いたときに、なかったと答えた から、聞いているんです。それは違いますね、じゃ。 私の陳述については、その答えと、ご質問のほうが、そういうふうにおっ しゃるんでしたら、そうかもしれません。 71 長谷のことは聞いておるが、それ以外のことは聞いていないということですね。 はい、そうです。 72 本質的な問題を聞きますが、先ほど、甲第13号証の各種分離信号を示されて、回 答しましたね。 はい。 73 分離信号にした意味を、簡単に述べていただけますか、何を目的としてですか。 安全と円滑です。 74 分離信号と二現示式信号とは、どちらのほうが円滑という意味では優れています か。 一概には言えないと思うんです。 75 東京都の書面の中には、それに関して言うと、交通渋滞が起きるから、分離信号に は問題があるんだという主張がなされていますが、それは違うんですか。 もう一度お願いいたします。 76 分離信号にしますと、交通渋滞が発生する可能性が大きいからという主張があるん ですが、それは違いますか。 交差点によってはそういう問題が出てきます。 77 じゃ、一概に言えないということを、もう少し述べていただけますか。 78 それじゃ、こう聞きましょう。今の上川橋交差点を分離信号にしますと、交通渋滞 は今以上に激しくなりますか。 なると思います。 79 これは、分離信号にしない一つの大きな理由でもある分けですか。 そのとおりです。 80 そこの部分だけに限定してで結構です。仮に押しボタン式にしろ、何にしろ分離信 号にすると、より渋滞が発生するということは分かりましたが、歩行者の通行の安 全性は、どちらが高いですか。 絶対的安全性ということは言えないと思いますが、安全性が高まることも あると思います。 81 もあるというのは、どういう意味ですか。安全性が高まるかどうか聞いている。 それは、歩行者の方も、車も、お互いに交通ルールを守ることを前提に、 私お話しておりますので、お互いに交通ルールを守れば、分離式にしな くたって、今の方法で十分安全が保たれております。 82 そういうことを聞いているんじゃないんです。上川橋交差点だけに限定して聞いて いるんですが、分離信号と二現示式信号とどちらが歩行者にとって、より安全性が 高いんですか。 ・・・・・車が通らないという前提に立てば、歩行者だけを渡すほうが、 安全性は高まると思います。 83 本件事故がどういう形で起きたか分かったいますか。 聞いています。 84 まず歩行者である被害者は、横断歩道の信号を何色に従って進行したと聞いていま すか。 青信号です。 85 加害者運転手渡辺ですが、信号はどの色に従って進行したと聞いていますか。 青信号です。 86 交通ルールを守っていますね。 守っておれば、この事故は発生しないと思います。 87 まず、基本的に聞きましょう。青信号を進行することに違法性はありますか。 青信号を通ることについては、違法性はありません。 88 どこに違法性があったんですか。 歩行者の横断を妨害したことです。 89 トラックによっては、車高が高くて歩行者が見えないこともありますね。 それはわかりません。 90 あなたの経験で、あるかないかだけを答えてください。 分かりません。 91 交通事案に関する現場捜査はしたことがありますか。 現場捜査はありません。 92 大型車を見たことはありますか。 あります。 93 大型の車の運転席位置がどの程度の位置にあるかは知っていますか。 高い位置にあることは知っています。 94 子供の身長を知っていますか。例えば、この被害者となった11歳くらいの子供の 身長は分かってますか。 正確には分かりませんが、1メーターちょっとはあるんじゃないかと思い ます。 95 車の死角に入りうる、つまり運転手の死角に入りうるということは理解できます か。 死角をなくするためにミラーをつけたり 96 いや、ミラーは別の問題として、私は物理的に、死角がありえるかどうかだけ聞い ています。死角がありえることは理解できますか。 車によってはあると思います。 97 本件加害車両がどういう車種かは知っていますか。 大型のダンプだということは知っています。 98 車高の高さは認識できますか。 大体分かりますが、どのくらいかということは分かりません。 99 低いですか、高いですか。 車高といいますと、運転席までの高さでしょうか。車の高さでしょうか。 100 運転席の高さと理解してください。 乗用車に比べれば、高いということは分かります。 101 乗用車に比較すれば、そういう意味では、先ほどから申しているような死角にはい ることは理解できますか。 今の車、死角はなくするために。 102 いや、そのことはいいんです。ミラーの問題は別として、ミラーのことは後で聞き ます。分かりますね。そのことは。ミラーがなければ。 ボンネット型じゃないかぎり、見えると思いますが。 103 じゃ、死角をなくすためにミラーをと言うことは、どういう意味ですか。 104 ボンネット型じゃないから、死角はないと。あなたは今、それに近い趣旨の証言を したから、ミラーはいらないのかと聞いているわけです。 いや、それは必要です。 105 なぜですか。 よく見えるために、必要です。 106 死角が存在することがあるからでしょう、違うんですか。 ミラーがなければ存在しますから、そのためにミラーをつけているんだと 思います。 107 この運転手は青信号に従って進行したんですが、なぜか青信号で横断中の子供をひ いたわけですね。それは端的に言って、どこに問題があるんですか。一つは運転手 の過失があると、あなたはおっしゃったね。さっき。 はい、そうです。 108 もう一つは、もし信号が分離式信号であったら、起きた事故でしょうか。 109 歩行者も運転手も、全員が信号機による交通整理を全部遵守するという前提の下 に、この信号が分離信号で遭あった場合には、この事故は起きたでしょうか。 歩行者も運転手もルールを守っておれば、二現示で、今の現在の信号で も。 110 いや、私が聞いているのは、この分離信号のことだけを聞いてるんです。分離信号 であった場合には。 それは、守れば、事故は起きません。 111 質問の意味、分かってます?本件事故は、分離式信号であった場合には、起きた か、起きなかったかを聞いているんです。あなたの評価は一切いらない。 ・・・・・・・・・・・・。 112 どうなんですか。 ・・・・・・・・・・・・。 113 質問の趣旨分かりますね。 ・・・・・・・・・・・・。 114 じゃ、更にこう聞きますね。歩行者にとっては、分離式信号の方が安全性が高いと おっしゃいましたね、ちがいますか。 ・・・・・完全に分離すれば、それは歩行者は、安全性が高まります。 115 完全にというのは、どういう意味ですか、私は完全な分離式のことしか言ってない んだけれども。完全な分離式としましょう。安全性、高まりますね。 分離式にすれば高まります。 116 すべての交差点を分離式にしない理由はなぜですか。 117 交通が渋滞するということですね。 そういうことです。 118 そうすると、統計的に見て、安全と交通の迅速さをどのようなところで区別して、 二現示の信号にしたり、分離式の信号にしたりするんですか、直感ですか、データ ーですか。 直感ではやっておりません。 119 では、何でやるんですか、データーですか。 データーもあります。 120 事故が頻発するというデーターですか。 それも一つの要因になります。 121 それ以外にどういうデーターがありますか。 交通量、歩行者の数、そういうのもデーターに入ってまいります。 122 それは何を暗示するんですか。交通量の多さと、歩行者数の多さは。 123 いや、違うでしょう、予想される事故の数を予測させるわけでしょう。 事故予測、それはちょと理解できません。 124 意味が分からない。 はい。 125 交通量が多い交差点で、分離にしないと、事故が発生する頻度が高くなると、そう いうことでいいですか。そういうふうに聞こえたんですが、先ほど。 交通量が多く、歩行者の数も多ければ事故の発生する危険性は高まること は、これは事実だと思います。 (甲第13号証を示す) 126 例えば、甲第13号証の五ページ目の中山交差点、あなたはこれ、おっしゃたね。 はい。 127 これは車が速い速度で右折したりするから、事故が起きやすいんだと、そうおっし ゃてましたでしょう。 そうです。 128 だから分離式にしたわけですね。 そうです。 129 ですから、私が聞いておるのは、事故が起きる頻度が大きな要素になっているのか な、ということを聞いているだけですけれども。 ・・・・・・・・・・・・。 130 そういう理解でいいですね。 ・・・・・・・・・・・・。 131 そうあなたが答えたから、聞いてるだけですよ。 転回速度が速くなりますと、事故の発生する予測は、高くなるとそういう ことで分離式にしているということです。そういうふうに私は、お話しし たつもりです。 132 そうしますと、事故が余り起きなければ、交通の円滑な進行のほうを重視するわけ ですね。 一概に言えないと思います。 133 では、上川橋交差点は、なぜそうしないんですか。 安全だからです。 134 人が一人死んでて、安全なんですか。 ・・・・・・・・・・・・。 135 何人死ねば安全じゃなくなるの、何人けがをすれば安全じゃなくなるの、それを聞 いてみたい、その部分。 ・・・・・現在の上川橋交差点の方式、これはもう都内にどこにでもあ る、また、日本国中どこでも認められている交差点。それをあえて、そう いう分離式にする必要はないと、私のほうは認めたために、今のままを採 用しているわけです。 136 その基準は事故の頻度が少ないから。 事故の頻度が少ないというのも、一つの要因になります。 137 あと、渋滞が起きるというのも要因でしょう。 138 この二つでしょう。 いや、もっとあります。 139 何があるの、ほかに。 140 道路交通だけの問題を聞いているんですよ、事故が起きるか、起きないかは、本件 で問題になっているのは、道路交通の問題だけですよ。 沿線というのは、道路交通法に目的を定めております、交通の騒音とか、 いろんな振動とか、交通公害の防止、こういうものも加えられております ので、そういうものも総合的に判断します。 141 そうすると、分離式にすると、そういう点では、騒音とかそういうものが高くなっ て、問題が生ずるということなんですか。 いや、それは一つの、騒音という、道路交通法の目的にあるというふうに お話しただけで。 142 じゃ、今の、本件とどういう関連性があるんですか。関連性がなければ、それは質 問には入ってませんが。 信号が長くなれば、排気ガス、公害の防止のほうからは影響がでてくると 思います。 143 そうすると、先ほどの分離式信号にしているところは、公害の点から問題じゃない んですか、それよりも安全性が勝るということですか。端的に言って。 安全、円滑、公害の防止、これの大きな目的がありますので、それを総合 的に判断して。 144 いいです。分かりました。それじゃこう聞きます。事故の頻度が高くなれば分離式 にするが、事故の頻度が高くない限りは、現行で十分安全だと、そういう理解でい いですね。 違います、それは。 145 どういうことですか、先ほどそういうふうにおっしゃったから、聞いてるんだけれ ども。まとめたんだから。今の信号でも十分安全なわけでしょう。そうおっしゃっ たからそう聞いているんですよ。 ・・・・・・・事故の頻度って、事故の発生していると、そういうふうに 取りましたので、今、お話ししましたんですが、事故の発生のおそれ、そ ういうことも加味していると、こういうふうに私は理解して、やっており ます。 146 そうすると、今、上川橋交差点は、比較的事故が発生する可能性が少ないから、あ のままでいいんだということでしょう。端的に言えば。 それもひとつの要因として、考えているということです。 147 そうすると、そこで人一人が亡くなったということは、どういうことなんですか、 それは。 大変不幸なことです。 148 結果として、しょうがないということ、あなたの言ってるのは。 そういうことじゃありません。 149 じゃ、どういうこと。やむ得ない、そういうことじゃないの。 この事故はドライバーの責任において発生したと、私は認めております。 150 我々は、だって、都にも責任があると思って訴えてるだけですよ。 信号機を設置して運用しておりますので、それには、私のほうは、別に問 題がなかったというふうに、私は認めております。 151 人間は過ちをする動物であるということは分かってますね。 分かります。 152 それをできるだけ少なくするのが、公共安全施設の義務であることも分かってます ね。 はい、そうです。 153 その観点から、どうなんですか。 ですから、そこに信号がついていること自体が、危険を防止して、安全を 図っていると、私のほうは、そういうふうに思ってます。 154 双方、青の信号に従って発進した事故においても、そうだということですね。 そういうことです。 被告東京都代理人(鈴木) 155 私のさっきの質問の仕方がちょっと悪くて、証人に誤解を与えたんじゃないかと思 いますので、一点、確認させていただきます。本件交通事故後、上川橋交差点の信 号制御を改善してほしいという要望があったか否かという問題なんですが、原告の 長谷さん、それと長谷さんの関係者、それ以外の方からそういう要望がありました か。 ございません。 156 長谷さんの関係者からは、もちろんそういった要望はあったわけですよね。長谷さ んと連名かなんか、私、知りませんけれども、同じように署名して、それで、そう いう要望があったということは、これは間違いありませんね。 それは、聞いております。 157 長谷さんと長谷さんの関係者以外には、そういった要望だとか、申し入れというの は、一切ありませんね。 ありません。 158 一切、証人は聞いてませんね。 ありません。 裁判長 159 現在ある信号機を、もし分離式に変えようとした場合は、費用なんかはかなり掛か るんですか。 費用は、その交差点それぞれに積算しなくてはいけませんので、幾らかか るかということは、ちょっと私、やっておりませんので分かりませんが。 160 費用のことは、じゃほとんど分かりませんか。 はい。 161 例えば、たくさん掛かるか、余り掛からないくらい。 そのくらいは分かります。 162 例えば、本件交差点だったらどうですか、具体的な金額はいいですが、信号機を全 く新しく一基設置するくらいの費用が掛かるとか、それよりか少なくて済むとか。 それは、少なくて済みます。 163 新しく信号機を全部取り替えるほどの費用は掛からないということですか。 164 じゃ、信号機を作り替えるのに近いくらいの費用はかかるんじゃないかということ ですか。 はい、柱等は取り替えませんので、それほど掛かりませんが、近い数字は 出てくるかと思います。 165 それから歩行者の押しボタン式の分離信号があるところがありあすよね。 はい、あります。 166 押しボタン式の信号特有の問題点というのは何かありますか。 これは、押しボタンを押しましても、すぐ変われば問題ないかと思います が、押しボタンを押しましても信号はすぐに変わることはできませんの で、現示の関係で、どうしても長くまつことになりますと、車がそこを常 時走っておればそこを横断することがございませんが、車が途切れたり、 少なかったりすると待ちきれなくて、つい赤信号無視という状況が出てま いりますので、かえって危険な状況が出てまいります。 167 それは具体的に、事故の例だとか、そういうのは聞いたことがあるんですか。 分離式を採用している交差点という意味でしょうか。 168 歩行者の押しボタン式の分離信号があるところで、歩行者が信号無視をして事故に 遭ったとか、そういう事例は聞いたことがあるんですか。 その設置している交差点で事故があったかということは、ちょっと私、今 のところは記憶にございません。 169 そうすると、一般的な予測として、そういうことがありえるんじゃないかというこ とですか。 信号を設置いたしましても、歩行者の信号無視による事故が結構発生して おりますので、そういうことも当然よそうされると。 170 一般論として、そういうことが予想されるということですか。 はいそうです。 東京地方裁判所八王子支部民事第三部 裁判所速記官 河西由紀 書類目次へ |